
t.a.g 仲地さんの美容道
「あなたらしさって何ですか?」 この問いに、あなたはすぐ答えられますか?その人が得意とするテクニックを切り口に、美容師というお仕事をするうえで大切にしていることやポリシーを紐解き、自分らしさを磨くためのノウハウや考え方をお伺いします。 今回は、カラーに特化したヘアサロン『t.a.g』のオーナーである仲地龍太さんです。(この記事は2024年7月掲載時点の内容です) >> 動画はコチラ ー仲地さんが美容師を目指したきっかけは? 「きっかけは、高校生の時に担当してもらった美容師さんがかっこよかったっていうシンプルな理由です。その美容室に入店した時、荷物を預かってくれるというサービスが初めてだったので感動して。それで美容師になろうと思いました」 ー特殊な経歴をお持ちとお聞きしましたが…。 「そうなんです。実は左官業をしていたことがあります。あのコンクリートを滑らかにする建設業の…」 ーなかなかそんな過去をお持ちの美容師さんはいないですよね! 「高校生の時、大学に進学したかったんですが、兄弟が5人いるので経済的に難しくて。もちろん美容学校もダメ。それなら美容学校なら通信制があるので働きながら通えるなと思い、左官業をして働いてお金を貯め入学し、サロンに就職して働きながら学校へ通いました」 ー今回はダブルカラー+エンドカラーというデザイン性の高い施術を実際に披露していただきました。仲地さん的ポイントは? 「ブリーチですね。モデルさんがすでにブリーチ毛で、根元の方が黒くなっているのでまず先にレタッチ。体温の影響で地肌に近いところがすごい明るくなりやすいんですが、根元1cm、 2cm~3cm、3cm以降と段階的に明るくなりやすいので、それを計算しながら塗り分けていくのが、一番時間がかかるところでした」 ー仲地さんはインスタグラムでも「ハイライトの神」と自らを表現されていますが、今回のようなダブルカラーやハイトーンカラーが得意なのでしょうか? 「t.a.gはカラーに特化したヘアサロン。僕はハイライトを売りにしていて、他のスタッフもバレイヤージュやミルクティベージュ、ルーツカラー、派手髪などそれぞれの売りのテクニックを持っています」 ーそうなんですね!仲地さんがハイライトを売りにしたきっかけは何だったんでしょう? 「当時ハイライトが流行っていて、どこかの美容師さんが載せてるハイライトがすごい好きだったんです。それをできるようになりたいなって、職場のみんなで研究していたんです。僕自身はそこまでガチでやろうとは思ってなかったんですけど、スタッフがやってほしいですと言うので、じゃあちょっとやってみようと思ってやってみたら、できるようになったという感じです」 ースタッフのリクエストに応えてやりはじめたと。 「そうですね(笑)」 ーハイライトもそうですし、今回のようなハイトーンやデザインカラーの時に気をつけていることはありますか? 「まずはダメージを極力少なくすることです。ブリーチやカラーをする以上、ダメージは絶対あるんですが、それをいかに減らせるかです。そのためにケア剤も導入しますし、塗り分けが大切になってきます」 ー他には…? 「似合うか似合わないかを、必ずお伝えするようにしてます」 ーなるほど!似合わない時ははっきり言いますか? 「はっきりとは言わないです(笑)。僕はまずはお客さまがやりたいことを受け入れたいです。その上で、他の方の例をあげてリスクを提示したり別の提案をして、最終的に納得のいくゴールを見つけていきます。なのでカウンセリングは長い方だと1時間かけることもあります」 ーカウンセリングに1時間ですか!すごい。 「やりたいカラーを今の髪にするとどんなリスクがあるかということだったり。それに、ハイライトって人によると白髪みたいに見えてしまう場合もあるんです。なのでその人の友人関係やキャラクターを考慮したうえで、このカラーにしたらどう突っ込まれるか…なんてこともイメージしながら決めていきます。もちろん、その人が帰った後にできるスタイルになるようにしています」 ー仲地さんがカラースタイルを極めていく中で、ともに磨かれたスキルはあったりしますか? 「観察力ですかね…?お客さまの髪やファッションはもちろん、話していくとニュアンスでこれはやりたくないだろうなとか、いいですよって言ってるけど、そこに含まれているわだかまりがある感じを察するようになったというか」 ーずばり、仲地さんの美容師としてのポリシーって何でしょうか? 「ダサいこと。人間鈍臭いところがあってもいいって思うし、失敗したことを隠さず素直に伝えることが大事だと思います。カラーってなかなか思っているように出ないこともあるんです。その時に、『めっちゃいいです!』なんて言わないです。正直に伝えて、お直しも提案させていただきます」 ー落ち込んだりイラッとした時はどう乗り越えていますか? 「イラッとしたときの考え方があって。基本的に人を嫌いになるのは、自分が育ってきた環境で大切にしていることを侵されるからなんです。だから他人の考え方や育ってきた環境が違うと理解したら、自分がイラッとしているだけで、その人は悪くないんだと思えるようになるんです」 ーすばらしい考え方ですね!ちなみに、SNSはどのように活用していますか? 「SNSは信頼度UPのためです。今はスタイルをほぼ載せず、僕の考え方やどういうふうなプロセスでお客さまに寄り添っていくかというカウンセリングのしかたなど、スタイルをつくる上で大切にしていることを乗せるようにしています」 ーちなみにInstagramに載せてらっしゃるゴリライトというのは!? 「僕ゴリラって呼ばれてたので、自分がつくるコントラストがついた立体的なカラーのことをそう命名しました(笑)」 華やかなデザインカラーを作り出す仲地さん。話すととても気さくで、柔らかな人柄にギャップがある、美容師としても人としても魅力的な方でした。テクニカルなカラーの裏には、経験で培った成功術が隠されている。そんなことに気づかされました。 仲地龍太 t.a.g オーナー Instagram : @t.a.g_ryuta tiktok : @ryuta0610 経歴 : 高校卒業後、左官業をしながら資金を貯め、大阪美容専門学校(通信制)へ入学。同時に某サロンへ入社。スタイリストデビューしたのち別サロンを経て独立し、『t.a.g』を共同経営としてオープンさせる。 <SALON DATA> t.a.g/タグ HP : https://tag-osaka.com Instagram : @t.a.g_color_hair

MY RULE【KIPI 早瀬 忍さん】逆張りではじめたレイヤーを極めてわかったこと
自分らしさってなんだろう。多様性のこの時代をサバイブするための、個性の見つけ方やスキルの磨き方術を伺います。 今回は、KIPI代表の早瀬 忍さん。レイヤースタイルの代名詞であるウルフを、流行する前に推そうと決めたきっかけや、そこから今につながっていることを聞きました。(この記事は2024年7月掲載時点での内容です) ウルフを習得するまで重ねた努力はそこ知れず ―単刀直入に、早瀬さんといえばウルフカットというイメージがあるのですが、ご自身としてはいかがでしょうか? 「今はめちゃくちゃ推しているわけではないのですが…(笑)、ブームになる前からウルフカットに力をいれていたのは事実です。というのも数年前に切りっぱなしボブが大流行した時代があったんです。日本中の女の子がそのスタイル。正直つまらないなって思いました。そこで逆張りで、ウルフといったレイヤーカットの練習をはじめたんです」 ―つまり、誰もやってないということですよね。どのようにスタイルを勉強したんでしょうか? 「カットの基礎的なことは当時働いていたサロンで教わったんですが、いいなと思うスタイルは海外のモード誌やファッションショーなどを見て、どう再現するんだろうってウィッグで練習を重ねました。実は僕、すごく不器用なんです。なので、他の人の何倍も練習しましたね」 「直感よりも理論的思考タイプ。技術を身につけるには、頭の中でカットの展開図が引けるくらいまで練習をするしかなかったんです。ここまでやったおかげで、『毛先のここを軽くしているので、こう巻くといい』というようにお客さまに理論的な説明ができるようになりました」 ―たくさんの努力で技術をものにされたんですね。長い間練習を続けてこられたモチベーションはなんでしょうか? 「負けず嫌いなんです。むしろ、それしかないです。勉強してみてわかったんですが、レイヤーって、入ることで髪がとても扱いやすくなるんです。多毛も癖っ毛も、動かすだけでおしゃれに見える。レイヤーを入れた方が生活が豊かになる人は多いはず、だから絶対に技術をものにしたいと思いました」 早瀬さんのレイヤースタイルコレクション 経営者として目指すのは“技術のスペシャリスト集団” ―早瀬さんは現在、お店の代表をされていますよね。後輩へはどんな指導をされているんでしょうか? 「はじめのうちは、ひとつ得意なことを伸ばすための努力をしていこうねと伝えています。つまり、それぞれのスタッフが極めたスキルを持っている、そんな『技術のスペシャリスト集団』を目指しているんです」 ―誰かが極めた技術や上達のコツを他の方に教えていってというのができるから、全体のスキルアップが早そうです。早瀬さんが編み出されたレイヤーカットのコツなんかもスタッフの方に伝授されているんでしょうか? 「もちろんです!新人の子がやっても上手くできる確実なカットの仕方や僕なりのノウハウはあるんです。でもここでは秘密にさせてください(笑)。ハサミは、僕は早く切りたいので長いものをよく使いますね」 ―なるほど。最後にこれからの目標を教えてください。 「レイヤーカットを推さなくなった。わけではないのですが、メンズカットに一層力をいれていきたいと思っています。街で見かけて『おしゃれな子だな~』と思うのって、女の子がほとんどじゃないですか。それを変えたい、おしゃれな男の子のスタイルを提案していきたいです」 KIPI代表 早瀬 忍 関西美容専門学校を卒業後、東京・表参道のサロンに新卒入社。その後、フリーランスを経て2020年に「KIPI」を立ち上げ。現在は育児にも奮闘中! Instagram : @hayaseshinobu <SALON DATA> KIPI/キピ 大阪市北区豊崎3-14-5 Instagram : @kipi_official_osaka

「超・主観的」私のこだわりワーク愛テム #5 パナソニック「プロバリカン ER1510P-S」 & 宝紀工房のシザー
毎日お仕事で使用している美容師のみなさんだからこそ語れる、お気に入りアイテムの「ここがいい!」を、個人的な偏見満載で紹介! メーカーのカタログからだけじゃ知り得ない、「愛した者にしか感じられない魅力」が今、明かされる…⁉(この記事は2023年10月掲載時点の内容です) <PROFILE> DOUBLE M オーナー/スタイリスト 的場 千敏さん 石川県出身。22年間勤めた大正区のサロンから独立。きめ細やかで丁寧なカウンセリング・スタイリングで、お客様一人ひとりの理想を叶える。 スタイリスト昇格時から愛用するバリカンは自分の手にジャストフィット ―お仕事で欠かせないアイテムを教えてください。 パナソニック社の「プロバリカン ER1510P-S」です。これは、私がスタイリストに昇格した時からずっと愛用しているバリカンで、20年近く使っていると思います。古くなれば同じ機種を買い直して使うほど気に入っています。 ―特に、どういった部分が気に入っていますか? 他にもいろいろなバリカンを持っていて用途によって使い分けていますが、この「プロバリカン ER1510P-S」はスリムボディで軽く、すごく持ちやすい。小回りが効いて細かい部分まで綺麗に整えることができるので、ついつい手に取ってしまうんですよね(笑)。それともう一つ、仕事に欠かせないアイテムがあります。 「宝紀工房」のシザーは小ぶりな6インチがお気に入り ―紹介していただけますか。 和歌山県にある「宝紀工房」のシザーです。「宝紀工房」は美容師・理容師が使うプロ仕様のシザーやシザーケースなどを手掛けているメーカーなんです。以前勤めていたサロンとお付き合いがあって、私も使うようになりました。いろいろなサイズを持っていますが、特に6インチのミニがすごく気に入っています。 ―見るからにかなり小さいですよね。 サイズはかなりコンパクトですが、切れ味が良く、驚くほど使いやすいんですよ。女性のショートやセミロング程度の長さであれば、これとセニングシザーがあれば十分です(笑)。これからもずっと使い続けたいアイテムですね。 <SALON DATA> DOUBLE M(ダブルエム) 大阪市住之江区北加賀屋5-6-18 リアライズ北加賀屋T02 Instagram :@double_m_hair

つづける、ということ。~あの人の、辞めるのやめた話~ #01「Labyrinth」代表 西尾隆介さん【前編】
あなたは今の仕事を辞めたいと思ったことがありますか? それでも辞めなかったのはなぜですか? そんなシンプルな疑問を、さまざまな職業人にぶつけてみました。 今まさに辞めようかどうか迷っているすべての方へ。 あの人の辞めるのやめた話から、つづけることの意味が見えてくるかも。 #01は、ヘアサロン「Labyrinth」代表 西尾隆介さんのお話を、全3回(前編・中編・後編)にわたってお届けします。波乱万丈の若手~中堅時代を乗り越え、今改めて思うこと、これから目指すものとは? まずは、厳しい時代を生き抜いた20代を振り返る【前編】です。 ※この記事は2023年4月公開時点の内容です。 >>続きを読む。 【中編】はコチラ。 【後編】はコチラ。 <今回の辞めるのやめた人> ヘアサロン「Labyrinth」代表 西尾隆介さん 1982年生まれ、高知県出身。2003年にNRB日本理容美容専門学校卒業後、大阪府内のヘアサロン勤務を経て2012年に独立、大阪・心斎橋に「Labyrinth」をオープン。現在は同店に加え、大阪・寝屋川に「Labyrinth yume」「Labyrinth noble」と、鳥取・米子にヘアカラー専門店「Kirei Yonago」を展開。また、2020年にヘアケアブランド「labyness」を立ち上げ、オリジナルヘアケア製品の開発・販売をスタートさせた。 https://labyrinth-hair.com/ @nishioryusuke 週1で人が辞める、サバイバルなアシスタントライフ。 ―まず美容師を目指したのはいつ頃、どのようなきっかけで? とにかく早く高知から都会に出たいと思っていた高校生の時、友人の兄さんが美容師を目指していると聞いて、自分もそうしようと。髪を触ることやオシャレが好きなわけでもないダサい田舎者でしたが、なんとなく美容師のカッコ良いイメージに惹かれて大阪の美容専門学校に進学しました。ちなみに、ちょうど進路を決めた直後にテレビドラマ「ビューティフルライフ」が放送されて、美容師人気が高まるタイミングでもありました。 ―みんながキムタク演じる美容師に憧れた時代ですね。最初に勤めたヘアサロンはどんな所でしたか? 大阪の中心地にある300坪ぐらいの大箱サロンです。1日170人程のお客様が来店されて、2時間待ちも珍しくない状態。あまりの忙しさに、1週間に一人のペースでアシスタントが辞めるんですよ。でもまたすぐに新人が入ってくるっていう……。そんな中で僕は閉店の23時まで働いて、それから24時まで掃除をした後、深夜3~4時までレッスンという日々。店に寝泊まりすることも多かったです。今思い出しても一番しんどい時期で、もう絶対にあの頃には戻りたくないっ!! ▲当時のヤバい働き方について共感する同世代の我々 ―時代を感じますね。当時はどの業界も少なからずそういうムードだった気がします。そんな過酷な環境で、なぜ西尾さんは頑張れたのですか? やっぱり先輩のスタイリストがめっちゃカッコ良く見えたからです。今は月の売り上げが100万いけば良いほうですが、当時100万はスタートライン。300万、400万、500万なんてスタイリストも珍しくなくて、自分もそうなりたい!という思い、ただそれだけです。 ―身近に目標となるスゴイ人がいたのがモチベーションになったと。何としてもそのレベルまで行きつこうと? そうです。でも、結局は辞めちゃうんですよ、僕。人間関係がしんどくなって、1年半後ぐらいに「もう無理!」って。 巻きで修了、爆速スタイリストデビュー&店長昇格。 ―新卒で入ったサロンをドロップアウトして、次に目指したのは? 大阪でも郊外のヘアサロンです。美容師が嫌になったわけではないので、京橋のサロンに就職しました。そこでは同僚たちに負けたくない一心で、いち早くスタイリストデビューして、誰よりも売り上げを上げたい! という思いが強かったです。結果としては入社半年後、21歳でデビューしました。 ―周りに比べるとスピード出世でしょうか? そうですね。既定のカリキュラムを無理やり終わらせて急いでデビューしたような印象でした。そしたら、デビューして3か月後に先輩方がみんな辞めてしまって。当時は美容室の開業ラッシュで、オープニングスタッフとして寄せ集めの美容師たちが2年ぐらい経ったら辞めてまた次へという流れがあり、ちょうどそのタイミングだったんです。 ―急に自分が引っ張っていかなければならなくなったと。 はい。そのまま22歳で店長になりました。そのうち20歳や18歳の新人も入ってきて、若い世代で回している店になって。今思えば色々とめちゃくちゃだった気がします。よくあれで乗り切れたなと。 ―その頃は辞めたいと考える余裕もなかったですか? なかったです。ただ、売り上げを上げたい! という思いはずっとあったので、当時唯一の情報源だった美容業界誌の「200万上げるには」「指名100人いくには」みたいな特集を毎号欠かさず読みながら、毎日ひたすら働く。いただくご予約は可能な限り全てお受けしていました。そしたら半年後には指名100人は超えるようになり、店内にサロン台が10席ある中、7席は僕のカット待ちのお客様という状態もありました。 ―あっという間に人気スタイリストじゃないですか! いや。まだまだ未熟だったのに、何とかこなす中でできるようになった部分が大きかったです。今考えれば、あの時すごく色々な方に犠牲になってもらって。よく付き合っていただけたなと思います。 ▲西尾さんの一生懸命さが皆さんを惹きつけたのだと思います ―やるしかない状況に追い込まれたことでグンと成長されたんですね。売り上げが立つようになってからは、モチベーションの変化はありましたか? それが、売り上げが上がればその延長線上で有名になれると思っていたのに、全然で。有名になって業界誌に取り上げられたりセミナーをやったりしたいと思っていたのですが、このままではその領域には辿り着けないと気づきました。そこから売り込みに力を入れるようになったんです。 苦節7年、地道な売り込みの果てに。 ―売り込みというのは、どういうことをされたのですか? 美容業界誌に載りたくて作品を持ち込みました。毎月作品をつくって、プロのカメラマンに撮影してもらって、それを東京の出版社に持参するんです。雑誌の一番後ろのページに出版社の電話番号が書いてあるので、そこに電話して「持ち込みさせてください」とお願いして行っていました。 ―今ならまずインスタで発信するんでしょうけど、当時はそうですよね。しかも、すぐには採用してもらえないイメージです。 そうですね。持ち込んで、フィードバックをいただいて、悪い部分を修正してまた翌月持って行くという繰り返し。結局ニューカマーとして初めて掲載してもらうまでに7年かかりました。 ▲またサラッとスゴイことを…… ―7年!? どこかで心が折れそうなものですが。 僕はつらいよりも、有名になりたい! という我のほうが大きかったです。じゃないと、持ち込みなんて絶対にできない。就職の面接よりはるかに緊張しますから。しかも悪い部分を指摘してもらえるならまだ良くて、可もなく不可もなくとか、コメントなしとかもあって。何度もへこみながら、それでも通い続けました。毎月評価していただくことで、普段のサロンワークも変わりましたね。 ―と言うと? カット、カラー、仕上げの各工程でセンスが磨かれましたし、時代とずれていないか、モデルに似合っているか、オリジナリティが出ているかを常に考えながら、形にできるようになりました。サロンワークだけやっていたら、そういった大事な部分に気づけなかったかもしれません。 ―編集部からのアドバイスに加えて、何か勉強もされたのですか? 目標とするスタイリストの方がいて、最初はその方のオマージュから始めました。サロンを2店舗経営しながら雑誌の表紙のスタイリングなどもされている方で、いつも意識していましたね。その方にどうやったら近づけるか真似しながら探って、近づきすぎて真似ばっかりになっているなと気づいたら、しばらく見るのをやめての繰り返しで。少しずつ個性を出せるようになったと思います。 こうして、周りの美容師の離職ラッシュには見向きもせず、我が道を突き進み目標を叶えていった西尾さん。怒涛の20代が過ぎ、いよいよ30歳で独立を果たします。しかし、そこからはオーナーとして苦悩の日々。スタッフたちの離職を食い止めるために、西尾さんが起こした働き方改革とは? 次回【中編】へ続きます。

つらいときを乗り越えるための呪文。美容師さんの「心に刺さった名言」は?
苦しいアシスタント時代、日々悩むスタイリスト時代、そして人生の岐路である独立…。プライベートはもちろん、美容師さんの華々しいイメージの裏にはそれ以上の苦労があります。 そこで、美容師さんが何気なく目にした本やテレビなどから心を捉えたもの、ときを経て心に突き刺さった名言を聞いてみました。(この記事は2023年7月公開時の内容です) 踏み出せば、その一足が道となる / SiSi 代表 瀧野達彦さん “ 踏み出せば、その一足が道となる ” ーアントニオ猪木 Q. この名言に出会ったのはいつ? 「中学生くらいの時、テレビを観ていたら」 Q. どんな時、なぜ心に刺さりましたか? 「独立をしようとしていた頃、迷いがありいろいろと悩む時期がありました。たまたまYouTubeでこの言葉が出てきて、不思議と前に出る力をくれました。昔聞いた言葉でしたが、時間が経って思いきって一歩踏み出す大切さを教えてくれました」 Q. どんな時にこの言葉を思い出しますか? 「新しいことに挑戦する時、自分の考えを行動に移す時」 ▼刺さった人 SiSi 代表 瀧野達彦さん 得意なスタイル : ショート、ボブ 好きな服のブランド、よく行くショップ : markaware、河原町のLen 休日の過ごし方 : 子どもと遊ぶ Instagram @takino___sisi <SALON DATA> SiSi/シシ 京都市東山区弁財天町19 y gion 3FHP : http://sisi-kyoto.com/Instagram : @sisi_kyoto 人間は自由の刑に処されている / HIKARIS スタイリスト 中平孝汰さん “ 人間は自由の刑の処されている ” ージャン=ポール・サルトル『存在と無』 Q. この名言に出会ったのはいつ? 「高校1年生とき。担任の先生からの言葉でした」 Q. どんな時、なぜ心に刺さりましたか? 「学生時代、自由はうれしいものでしたが、それには責任が伴うものだと教えられ、ハッとしました。何事にも責任がつきものなんだということを常に忘れないようにしています」 ▼刺さった人 HIKARIS スタイリスト 中平孝汰さん 得意なスタイル : デザインカット、カラー、パーマ 好きなブランド : VAQUERA、Charles Jeffrey LOVEBOY、Stefan Cooke、Magliano、JACQUEMUS よく行くショップ : fethersgoffa、11747391 最近ハマっていること : (常に)ファッション、日帰り旅行 Instagram : @hikaris_kouta <SALON DATA> HIKARIS/ヒカリス 大阪市北区中崎西2-5-21 HP : https://hikaris1930.com/ Instagram : @hikaris1930 これでいいのだ / まえがみ美容室 スタイリスト なつこパンダさん “ これでいいのだ ” ーバカボンのパパ Q. この名言に出会ったのはいつ? 「子どもの頃。テレビでバカボンをアニメで観ながら歌っていました。これでいのだ~これでいいのだ~ボンボンバカボンバカボンボン♪」 Q. どんな時、なぜ心に刺さりましたか? 「落ち込んだ時にふとお風呂で歌っていたら泣いても元気になった。自分は自分のままでいいんだよって思えるようになった」 Q. どんな時にこの言葉を思い出しますか? 「毎日そう思います。お客さまに“おまかせ”というオーダーをよく言われますが、よっし!と思って仕上がった時に、心の中で『これでいいのだ』。自分に自信が湧いてくる魔法の言葉です」 ▼刺さった人 まえがみ美容室 スタイリスト なつこパンダさん 得意なスタイル:ショート、パーマ 好きなブランド : ギャルソン、いろいろ 最近ハマっていること : 海外ドラマ鑑賞(ストレンジャーシングスやウェンズデー、韓ドラなど) 休日の過ごし方 : 家族で散歩 @maegami_natukopanda <SALON DATA> まえがみ美容室 和歌山県和歌山市四番丁48 Instagram : @ushirogami_miccham(ネイルサロン用) 報われるとは限らない。が、成功したものは皆努力している。/ TLUUS梅田 代表 土谷大貴さん “ 報われるとは限らない。が 成功したものは皆努力している。 ” ー鴨川会長 Q. この名言に出会ったのはいつ? 「『はじめの一歩』というボクシング漫画に出てくる、主人公のコーチ的存在である鴨川会長の名言です。美容師になりたての頃に出会いました」 Q. どんな時、なぜ心に刺さりましたか? 「アシスタントの時代、レッスンしても全然上手くならないと悩んでる時に見て感動しました」 Q. どんな時にこの言葉を思い出しますか? 「思ったように結果が出ない時。この言葉に従って成功するまで努力しようと思います」 ▼刺さった人 TLUUS梅田 代表 土谷大貴さん 得意なスタイル:ショート 好きなブランド : Lui’s 休日の過ごし方 : 生後3ヶ月の息子と16歳のワンちゃんと奥さんと過ごす @tluus_daiki.short <SALON DATA> TLUUS梅田/トゥルース ウメダ 大阪市北区角田町1-20 フキヤビルB1F Instagram : @tluus.hair.official 美容師さんの「心に刺さった名言」は、勉強や仕事など、がんばる誰もの心にも刺さるものです。みなさんもぜひ、つらいときにはこの言葉を思い出してみてください。
ぶっちゃけ教えて!美容師さんのリアルなお財布事情
美容師さんの給料は少ないってよくささやかれるけれど、本当のところはどんな感じ!? というワケで今回はアシスタント・スタイリスト関係なく20代の美容師さんを対象に匿名でアンケート調査。実際はどんなことにお金を使ってる? 給料はどれくらいもらってる? みんな貯金ってしてるの?… 疑問が尽きないお財布事情をぶっちゃけて聞いてみました!(この記事は、2023年7月公開時の内容です) 今回アンケートに協力いただいた20代美容師さんのうちスタイリストが6割、アシスタントが4割という結果に。皆さんサロンで勤めている方ばかりでした。 Q1 ぶっちゃけ給料(額面で)どれくらい? 一番多かったのは20〜30万円。続いて10〜20万円、30〜40万円でした。10万円以下と40万円以上と答えた方はいないという結果に。給料が低いというイメージが根本にあるからか、予想以上に皆さん貰っている???という印象。30〜40万円と回答した方が20%以上いたことに少し驚きました。 Q2 皆さんの住まいは? 1人暮らしをしているという方が半分以上を占めるという結果に。続いて多かったのが実家暮らし、そして最後が同棲や結婚など、パートナーと一緒に住んでいる方でした。20代ということもあり、ご結婚されている方は少ないのかも。 Q3 自由に使えるお金ってどれくらい? 月々の固定費(家賃や光熱費、携帯代)を除いて自由に使えるお金が5〜8万円と答えた人が一番多いという結果に。中には月に15万円以上自由に使っているという夢がある答えもありました。 Q4 正直、貯金ってしてる?? NOと答えた方が約7割。なかなか貯金ができない…というのが現実のよう。ちなみに貯金をしている素晴らしい3割の方に理由を尋ねると「貯めないとダメだと思っているから」「将来のため」「一人暮らししたいから」といった答えが。貯金額もついでに聞いてみたところ100万円以内がほとんどという結果となりました。 Q5 お金の使い道で一番多いのは? じゃあ一体何にお金を使っているのか!?ということで聞いてみると、やはりオシャレや流行に敏感な方が多い職業だからか、多かったのが衣類やアクセサリーと美容・化粧品。逆に意外だったのが交際費より趣味活にお金をかける方が多いという結果だったということ。もしかすると、コロナ禍だったという影響もあるのかもしれませんね。 Q6 最近買った一番高い買い物は? やはり一番多かったのは服。ヴィンテージのTシャツや衣装用に買った服などが挙げられていました。続いてコスメとハイブランドでも手が出しやすい財布がランクイン。その他少数意見としてテントや旅行用のチケットといった趣味活系やスニーカー、シルバーアクセサリーなどのファッション小物系の答えが多かったです。 Q7 支払いは現金派? キャッシュレス派? さすが20代、キャッシュレス派がマジョリティという結果に。キャッシュレス派の意見で多く見かけたのは「圧倒的に楽だから」。他にも「ポイントがつくから」といったやりくり上手な声も。一方で現金派は「キャッシュレスだとお金を使った気がしない」「翌月に請求がくるのが嫌だから」「何円使ったか分からなくなるから」という意見が集まりました。 以上、美容師のお財布事情にまつわるアンケート調査でした!匿名ということもあり、リアルな声を聞くことができてなかなか面白い結果となりました。また気になることがあれば、開催されるかも?なので、次回をまたお楽しみに!

howほっしーさんの美容道
美容師を続けていれば、その仕事をするうえで、大切にしていることやポリシーのようなものがきっとあるはず。ここでは、人気スタイリストに美容師という職にまつわる質問をあれこれ投げかけて、その人の美容道を探ってみたいと思います。今回は、『how(ハウ)』のほっしーさんです。 ≫how ほっしーさんの動画も公開中!「how ほっしーさん直伝!ボブ徹底解説!」 美容師を目指したきっかけは? 「小学生の時、当時担当してくれていた美容師さんに憧れたからです。その美容師さんに服をいただいたり。小学校3年生の頃の話なので、自分でアメリカ村に服を買いに行くことがなかったので、身近にオシャレと感じる場所が美容室でした。そこからは、美容師になるということしか考えていなかったですね」 得意な技術は? 「カットです。カットが唯一、料金をプラスせずにヘアスタイルを変えることができると思っています。例えば、カラーだとダメージレスにしようとすると、良い薬剤を選ぶことでどうしてもプラス料金がかかってしまうんです。でも、カットに関しては自分の腕だけが勝負ということもあり、こだわりたいと思っています。それと、デザイン的な似合わせというところも、美容師の個々の色が出てくるポイントだと思っているので、カットは自分らしさが一番出しやすいと考えています」 施術するうえでこだわっていることは? 「再現性と持ちのよさ、お客様のライフスタイルに負荷のかからないことを心がけています。美容室ではなく家でもできる再現性という部分を大切にしていますし、髪を切ってから、ある程度時間が経ってもまとまりやすいデザインにするようにしています。ちなみに、カットは技術というよりは、どれだけ1人のお客様に対して想いやれるかということが、カットの上手さではないかという考え方です」 美容師をやっていてよかったことは? 「ずっと学べることです。いろんなお客様と出会えて自分の知らない世界の話や物事を知れることです。美容師という仕事を第一でやっていますが、違う仕事にも興味があるので、いろんな話を聞けるのは美容師だからこそできることだと思います。それは、人生においてもよかったことですね」 技術以外で身についたスキルは? 「カメラです。カメラをやりだしたのは、5-6年前くらいからで、ハマったきっかけは、単純にガジェットが好きだったことです。仕事でも撮影することが多いので、それも相まって好きになりました」 美容師としての自分のこだわり、自分らしさとは? 「先ほども言いましたが、再現性と簡単に扱える髪の毛、頑張らなくていいヘアスタイル作りです。人によって髪の毛に対してかけれる時間は違うと思っています。お子さんがいたり、朝が忙しい人でも最低限の時間で簡単におしゃれになれるようなヘアスタイルを提案できれば一番いいかなと考えていて、お店でよく提案しているのがボブになります」 なぜボブにこだわっているのか? 「今の時代のライフスタイルに1番適していると思っていて、忙しく時間がない中でもおしゃれが成り立つボブを作るためです。ヘアスタイルとして扱いやすいところも兼ね備えているので、ニーズが幅広いボブをよく提案しています。仕上がった時のデザイン性や質感にもこだわっています」 その他で注目しているヘアスタイルは? 「パーマの多様性に魅力を感じています。それこそ、ボブに飽きた人たちに提案できるくらいのパーマで、そのパーマも元のストレートにすぐ戻れるくらいのパーマがよいと思っています」 トレンドの情報源は? 「ピンタレストや外国の方のSNS、最近は中国版Instagramの小紅書(レッド)などもチェックしています。小紅書は、中国とか韓国の美容師さんの投稿もあって、日本とは全然違う発想のスタイルとかがあり、アイデアを得る部分で活用しています」 ほっしーさんの美容道を探るインタビューはいかがでしたでしょうか? 美容師になったきっかけがおしゃれへの憧れで、別記事の1週間コーデにも登場してもらったくらいおしゃれなほっしーさん。カットは想いやりと教えてくれましたが、センスフルな方だからこそできるカット術でもあると、実際のカットを拝見して感じました。 ≫続いて「how ほっしーさん直伝!ボブ徹底解説!」動画を見る ほっしー how オーナー Instagram:@hosshiimo 経歴:ヴェールルージュ美容専門学校。大阪市内のヘアサロンを2店舗勤めた後、昨年に自身のヘアサロン『how』をオープンさせる。 <SALON DATA> how/ハウ HP:how-hair.com Instagram:@how.hair

【人気アーカイブ記事】 「超・主観的」私のこだわりワーク愛テム #2 「ラブクロム」のカットコーム
過去、人気記事ランキング上位だった記事をご紹介! まだ読んでいなかったら是非是非チェックしてくださいね!