New sense 新しい動きで魅せる美容室【DIXBON / RIBBON編】
ヘアカットやヘアケアをするだけではなく、それ以外のサービスや楽しみを提供する美容室も存在します。ここでは、他の美容室では味わえないコトを提供する美容室をご紹介します。今回は、北堀江にある美容室『DIXBON(ディスボン)』。そこは、夜になると雰囲気バツグンなBARへと生まれ変わるんです。 東京の美容専門学校を卒業後、堀江にある美容室『CACHÉ(カシェ)』で働いていた大東石弥さんが、今から10年前に独立してはじめたのが『DIXBON』。「大阪の地理感や知識があまりなかったので、仕事終わりに犬の散歩がてらにこの辺をウロウロしていたとき、ビルの間にある小屋のような物件を見つけたんですよ」と、大東さんは見た瞬間、自身のやりたい美容室のイメージができるくらい一目惚れした物件なんだとか。確かに、堀江にこんな物件があるなんて驚きです。 そんな小屋のような物件で『DIXBON』をスタートさせて、昨年末にBAR『RIBBON(リボン)』が併設するカタチでリニューアルさせた。「どこにもないような美容室にしたかったんですよ。大きいスピーカーは絶対入れたかったですし、海外のデザイナーに頼んだらこうなるのではというイメージで内装を考えました。バーカウンターに欄間を設置するとか日本人では考えられないじゃないですか」と話すように、美容室の固定概念からかけ離れた空間が広がっています。特に注目したいのが映画館にあるようなサイズのスピーカー。アメリカの劇場や映画館で使用されていた70年代の<アルテック>のスピーカーをはじめ、50年代の真空管アンプやターンテーブルを設置するあたり、半端ないこだわりを感じます。そのスピーカーのグレーカラーに合わせた棚色と天井から壁面を覆うピンクのカーテンが印象的で、聞けば大東さんの好きな色合わせなんだとか。 大東さんが好きで収集した<ブレス>のストーンドッキングワイングラス。こんなこだわりのグラスでお酒を味わうのも良さそう リニューアル後は手前に『RIBBON』の世界観が広がり、奥の扉を開けると『DIXBON』が併設されており、ほのかに青く浮かび上がるセット面が印象的な空間に。アメリカの禁酒法時代にあったというスピークイージーと呼ばれる隠し扉を開けたらBARがあるスタイルとは逆の発想になっているのもおもしろいです。 「これまで美容師の仕事しかしてこなかったので、いろんな発見があります。美容室のお客さんとは違いBARでは幅広いジャンルのお客さんと出会うのでおもしろいですね」と、このスタイルの美容室になって新たな発見もたくさんあったようです。「今後はここでイベントもやっていきたいですね。箱は作ったので、ここに興味を持ってもらい、何かおもしろいことをやりたい人が出てきたら、ここを作った意味があるのかなと思いますね」 BARを併設させたのも、行きたいBARがなかったからという話もあり、働きにくかったら働きやすいように自分で変えていくという信念で美容師業を続けてきた大東さんの理想の空間がここにはありました。 <SALON DATA> DIXBON/ディスボン 大阪市西区北堀江1-14-8 Instagram:@dixbon_hair HP:dixbon.com RIBBON/リボン Instagram:@ribbon_osaka
わたしの独立物語 【CLENN 弓さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は愛知県名古屋市・鶴舞エリアでオープンして2年目のヘアサロン「CLENN」オーナー、 弓さんの独立ストーリーに迫っていきます。 教えてくれたのは… CLENN オーナー 弓さん 中日美容専門学校卒業後、株式会社サムソン入社。「SUPRAM」のトップスタイリストとしてサロンワークを中心に活躍。36歳で出産、38歳で独立したママ美容師。斬新なファッションやメイクでも注目されている。 Instagram : @clenn_yumi ー 独立を考えたきっかけは? 「初めは『SUPRAM』で働き続けるつもりでした。子どもを産んで、産休から戻ると働き方や給与面が変わるんですね。その時に、ママ美容師の現実はこうなのかと痛感しました。規則だからと受け入れられたけど、何か新しいことがしたかった。けど、面貸しで働くのもほかのサロンに行くのも、なんか違う。ママ美容師の可能性を広げることに挑戦したいと思ったのがきっかけです」 ー 物件はどのように探しましたか? 「複数の不動産にアポを取って、希望条件に合う物件情報を随時送ってもらうようにお願いしました。ギャラリーにもポップアップスペースにもなる場所を作りたくて…。広い物件を探すとなると、希望していたエリアではなかなか見つからず、視野を広げて選択肢を増やしたら、ここが見つかりました」 ー お店づくりでこだわったポイントは? 「いっぱいあります(笑)。一番のこだわりは、お客さま専用の充電器コンセント。美容室に限らず、あると気が利くなって思うんですよ。それで、ひとブースにつき1つ付けました」 ー 確かに、それは便利ですね!空間全体については? 「 『一生通えるサロン、一生働けるサロン』を目指しているので、その想いを体現しています。あえて見えるように配線しているのは、私たちスタッフ全員、心を開いて、取り繕うことなくお客様と向き合いたいから」 ー なるほど、スタッフの皆さんのスタンスが内包されているんですね。ちなみに「CLENN」の名前の意味は? 「縁側の『くれ縁』に由来していて、雨の日も晴れの日も座っているだけで四季を楽しむことができる場所のことを言います。美容室に来てくださるお客様も、座っているだけでワクワクできたらという想いを込めて、『くれ縁』を略してCLENN(クレン)にしました」 ー 実際にオープンしてみて、心境の変化はありますか? 「いまは覚悟が違いますね。今後スタッフが増える予定なんですが、親御さんが頑張って20歳まで育ててくれた子を預かって育てると思うと、責任重大です。仕事も子育ても疎かにしたくないから、お店のこと、スタッフのこと、子どものことを常に考えています。 子どもはわがままで言うことを聞かない(笑)。だからこそ鍛えられたし、将来この子が働く職場としてここ(CLENN)を見たら、考えたら、どうなんだろう?いいサロンかな?って。そういう目線になると、緊張感と隣り合わせ。そういう意味では、親になったタイミングで独立してよかったです」 ー 今後のビジョンを教えてください 「ビジョンとして『一生通えるサロン、一生働けるサロン』を掲げた以上、ここ(CLENN)だけでは難しいと思うんです。若いスタッフが増えてきたら、その子たちがメインのサロンをつくって。ママ美容師が増えたら、お互いが助け合えるママさんサロンをつくりたい。そんな夢はあるけど、お店づくりが先行するのは違う。いま携わってくれているスタッフが幸せであることが大事です。やっていく中で、ママ美容師ならではの価値観が活かされるときがくると思うから、そう信じて続けます」 最後に「デビューも独立も、みんなより遅かったけど、決めたらできます。できました。周りと比べないのが一番」と、弓さん。何事も挑戦することに年齢は関係ないと、教えてもらいました。また、ママ美容師ならではのお話をたくさんありがとうございました!次回の物語をお楽しみに。 <SALON DATA> CLENN/クレン 愛知県名古屋市中区千代田3丁目11−2 シャトー鶴舞 2F Instagram : @clenn.official
わたしの独立物語 【snuw 福山 祥太さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は名古屋・伏見エリアで2023年5月にオープンしたヘアサロン「snuw」の代表、 福山 祥太さんの独立ストーリーに迫っていきます。 教えてくれたのは… snuw 代表 福山 祥太さん 中日美容専門学校卒業後、名古屋の大手美容室に入社。フリーランスへの転身を機にSNS発信に力を入れ始め、半年で1万人のフォロワーを獲得。「snuw」オープン直後「カミカリスマ2023 Greaty∞ カット部門」受賞したほかコンテスト受賞歴多数。 Instagram : @snuw_fukuyama ー いつごろから独立を視野に入れ始めましたか? 「スタイリストになる前は、とにかく早くデビューしたい一心でした。デビューが見えてきたタイミングで、今後どんなスタイリストになりたいかを考えるようになりましたね。もっとこういう空間(サロン)を作りたい、という思いが芽生え始めて退職しました。お店を持つには資金もスタッフも必要。そのために、まずはフリーランスになって独立開業準備をしようと、人生プランを立てました」 ー フリーランスになってから、どんな変化がありましたか? 「時間の制約がない分、作品撮りに注力して、美容師さんに注目してもらえるように、ヘアスタイルのビフォーとアフター、どちらも投稿するようにしていました。それだけでは…と思って、積極的にコンテストにも参加するようにもなりました」 ー コンテストの経験を通して得たことは? 「数ヶ月間、一人のモデルさんと向き合って、本気で悩んで準備します。骨格や顔のパーツなどを見て、黄金比率になるように『似合わせ』を考えたり、その人自身の髪のお悩みやライフスタイルも聞いたりコミュニケーションを取る中で、ふとした表情とか話し方からも汲み取るように意識しています。そういった経験を重ねることで、日々のサロンワークでも幅広い提案ができるようになって、強みになっています」 ー snuw(スニュウ)が大事にしていることは? 「コンセプトは『新しい自分に出会う場所』。おしゃれになりたい、可愛くなりたい、という人は多いですが、どうしたらいいかわからない方も多い。一人ひとりの魅力を最大限に引き出せるように提案します」 ー 内装デザインでこだわったポイントは? 「『DREAM PLUS』でグランプリを受賞して、パリコレのランウェイやバックステージに招待していただいたのが、このサロンがオープンする2ヶ月前くらいのことで。その時に現地で目に入った建物がクリームイエローで可愛かったんです。そこから着想を得て、素材は洞窟っぽい質感に。曲線を多く取り入れることで“女性らしさ”を感じるテイストにしました」 ー 実際にオープンしてみてどうですか? 「スタッフのみんなと高め合えて、日々わくわくしています。朝礼の時間に共有する僕のノウハウをそれぞれが自分なりに落とし込んで、お客様に提案している姿。そして、その仕上がりを見てお客様が喜ぶ姿。数字でいうとお客様の人数。どれもみんなの成長ですし、それが僕のやりがいになっています」 ー 今後のビジョンを教えてください 「僕が先陣を切って、背中を見せることでチームを鼓舞していくという1年でしたが、2年目はいままで以上にみんなと一緒にサロンを作っていきたいです。スタッフのやりたいことをなるべく叶えてあげたい。僕からはそれぞれのいいところを見つけて、伸ばしていけるように伝えていけたらなと思っています」 会社員からフリーランス、そして独立。これまでにさまざまな働き方をご経験された福山さんは、志が高く、行動力のある人です。努力の積み重ねが大事だと、教わりました。また次回の物語をお楽しみに。 <SALON DATA> snuw/スニュウ 名古屋市中区栄1-6-1 C-ForestⅦ 2A Instagram : @snuw.hairsalon
なんでもやっテミル! 個性激光りの注目サロン「TEMIL HAIR」~後編~
大阪・茨木市にあるヘアサロン「TEMIL HAIR(テミル ヘアー)」。同店ではかなりユニークな店づくりをされているとのことで、オーナーの谷村育孝さん、荻野峻さんに話を伺いました。前編・後編の二本立てでお届けします。続いて【後編】です。 →【前編】はこちら スタッフ陣による抜群のチームプレー&絶妙なバランス感 「TEMIL HAIR」には現在、谷村さんと荻野さんを含めた11名の美容師と、1名の広報スタッフが在籍しています。モットーは、全員接客・全員施術。例えば、あるスタッフが施術中に薬剤選びやカットの仕方に悩んだ時、同店では自然と他のスタッフも交えてディスカッションが始まります。自分の担当だからという変なこだわりやプライド無く、お客様にとってベストな選択を全員で考え、提案するのです。 「人間は一人よりも二人、二人よりも五人のほうが、さまざまなアイデアが出るもの。それが集団で働くメリットであり、大事にしていきたい部分なんです」と二人。フロアにほとんど壁のない設計も、実はお互いのことを気にし合って、フォローし合えるようにという考えが反映された空間づくりとなっています。 ▲二人のお話から普段のチームワークの良さが伺えます その上で、谷村さんはCEO(チーフエンタメおじさん)、荻野さんはCCO(チーフクリエイトおじさん)である他、スタッフにはそれぞれ、教育オフィサー、チーフデザインオフィサー、チーフラブオフィサー(スタッフを愛で包む人)、コツコツオフィサーなど、肩書・役割があります。オーナーの二人だけではなく、それぞれが自分の領域では権限を持ち、他のメンバーを引っ張っていく。そうして、スタッフ間の良いバランスが保たれていると言います。 ▲個性豊かなスタッフ陣の絶妙なバランス感も、同店の強みだと語る二人 美容師だけが仕事じゃない! 二刀流もウエルカムなキャリア設計 さらに、同店では心が豊かになる働き方を目指して、「美容師EX制度」という新たなキャリアプランを設定しています。目標の売上数字があり、それを達成した暁には、そのままどんどん美容師として突き抜けるもよし、美容師に軸足を置きつつ違う分野に挑戦してもよし。そのチャレンジを、店として応援するという制度です。 二人は、「美容師以外に、例えばデザインだったり営業だったり、自分の好きなこと、得意なことがあるなら、そちらに時間や場所を使ってOK。美容師としてたくさんのお客様を担当し、売上を上げ続けるのも良いのですが、いつかしんどくなるかもしれない。そんな『ちょっと疲れたな』という時に、『違うことをしても良いんだよ』という環境を作りたかったんです」と話します。 実際に現在、谷村さんと荻野さんが先陣を切って実践している最中。例えば、営業時間中に他の勉強をしたり、依頼を受けて庭木の剪定に出向いたり、グリーンを用いた空間づくりの施工を行ったり。好きと得意を生かして、マルチに活躍しています。 ▲美容師+αの動きを積極的に行う谷村さんと荻野さん。ちなみに、店内のフラワーオブジェも二人の手作り ▲成人式用の花の髪飾りや、ウエディング用のブーケ作りもお手の物 美容師自体もちろん素敵な仕事だとしつつ、「美容師の素敵なところは、自由な発想力やクリエイティブ力をたくさん持ち合わせているところ。それをスタッフ皆に理解してもらって、美容師としてしっかりとお客様との関係性をキープしながら、他のことにもどんどん挑戦してほしいなと思っています。私たちがしっかりとサポートするので安心して、失敗しても良いから色々チャレンジしてほしい」と話す二人。 そのため、スタッフ教育にも力を入れ、定期的に面談をしながら一緒にキャリアビジョンを描くようにしているそう。同店で働くスタッフ一人ひとりに、予想もしていなかったような未来が待っているのです。 ▲二人にかかれば、美容師の可能性は無限の広がりを見せます 多彩なイベントで皆ワクワク。誰もがお店のファンに 数々の斬新な取り組みを行っている同店ですが、多彩なイベントもその一つ。社内イベントとしては、毎年一風変わった会場で行う入社式や、夏のスイカ割り、花火大会、慰安旅などがあります。皆でワイワイ楽しめる機会が多いのも、スタッフの良き関係性づくり、楽しい職場づくりにつながっているようです。 ▲同店では二人はもちろん、スタッフ全員が仲良くノリ良く、日々楽しいムードで働いています さらに、お客様を巻き込んで行う2大イベントとして、6月の第一日曜日に行う夏フェスと、冬の大抽選会があります。 夏フェスでは、美容にまつわる体験ブースはもちろん、飲食や物販、占いブースがあったり、マジシャンを招いたステージショーがあったり。この日ばかりはヘアサロンの面影はほぼなく、同店まるごと賑やかなお祭り会場と化します。スタッフとお客様はもちろん、気づけばお客様同士もここですっかり仲良くなってしまうのだとか。 二人曰く、「お祭りってみんなで作るから楽しいと思っていて。お客様に出演や出店をお願いすることもあります。イベント事はどんどん関わったほうが、絶対に面白くなる。そういうことが好きなスタッフ・お客様が集まって、もっとこの場を盛り上げていけたら嬉しいです」と話します。 一方、冬の大抽選会は、破格の豪華プレゼント大会。ヘリコプターやセスナでの大阪・神戸空中散歩、高級車でのイルミネーション巡り、ディズニーランドやUSJご招待などなど、目玉商品が盛りだくさんです。 ▲普段は落ち着いた雰囲気の同店ですが、事あるごとにイベント会場に大変身。広々とした空間だからこそ実現できる試みです 二人はこういったイベントを通じ、熱狂的なファン作りをミッションと考えているのだとか。いちヘアサロンの美容師とお客様に留まらない、もっと広く深い関係性づくりを目指しているのです。「髪を整えることはもちろん大前提として。それ以外にも、『何か面白いことやるの? 応援するよ!』と言ってくださる方を増やしたい。そうして店のことを好きになっていただき、ファンとなって通っていただけることがベストだと考えています」と話します。 ヘアサロンの常識を覆すように数々のユニークな展開を行い、それを一緒に面白がれるスタッフとお客様が集まる同店。「なんでもやっテミル」を合言葉に突き進む二人には、まだまだやりたいことがたくさんあると言います。「多店舗展開よりも一点集中。突き抜けた個性で、眩しくて見えないぐらいの激光りのサロンにしていきたい」という夢に向かって。常に関わる人たちがワクワクする、思いもよらないことが続々と巻き起こる同店の動向から目が離せません。 ▲「なんでもやっテミル」がモットーの同店。今度は何をやってみるのか、乞うご期待! -------------------------------------- TEMIL HAIR https://temilhair.jp/ 大阪府茨木市畑田町3-39 --------------------------------------
なんでもやっテミル! 個性激光りの注目サロン「TEMIL HAIR」~前編~
大阪・茨木市にあるヘアサロン「TEMIL HAIR(テミル ヘアー)」。同店ではかなりユニークな店づくりをされているとのことで、オーナーの谷村育孝さん、荻野峻さんに話を伺いました。前編・後編の二本立てでお届けします。まずは【前編】です。 学生時代からの名コンビで創る、日本一の激光りサロン 賑やかな駅前から少し離れた、閑静な住宅街に佇む「TEMIL HAIR」。4年前、谷村さん、荻野さん、MANAMIさんの3人で立ち上げたヘアサロンです。 ▲オーナーの谷村育孝さん(左)と荻野峻さん(右) 共に大阪府茨木市出身で、初めて出会ったのは高校卒業後に進学した大阪市内の美容専門学校。二人は同じクラスになり、さらには学級長と副学級長に指名され、一緒にクラス運営を行いました。当時から盛り上げ役とまとめ役の名コンビで、「お互い違うものを持っていて運営のリズムが良く、やりやすかった」と話す二人。常に「なんでもやってみようや!」を合言葉に、他のクラスとは異なるユニークな取り組みを実践しては、話題になっていたと言います。 そんな二人は専門学校2年生になったある冬の夜、神戸の六甲山までドライブへ。山の上の展望台で眼下に広がる関西一円の夜景を見ながら「いつかここ(関西)に、激光りするサロンを作ろう」と約束します。 ▲学生時代から相性抜群の二人 そして2006年3月、二人は専門学校を卒業。谷村さんは技術堅気な老舗サロン、荻野さんはデザインや撮影といったクリエイティブの追求と多店舗展開に力を入れるサロンへ就職しました。その時に掲げた目標が、谷村さんは技術で日本一、荻野さんはビジュアル作りで日本一になって、一緒に日本一のヘアサロンを作ること。「お互い別々のことを極めて、日本一を取ったら集合!」と誓い、異なる道を歩き始めました。 それから約10年後に、谷村さんは全日本ヴィダルサスーンカットコンテスト、荻野さんは全日本ヘアカラーフォトコンテストで見事優勝。二人は再び集まり、2020年6月、地元・茨木に約束の店「TEMIL HAIR」をオープンさせたのです。 広大な空間を生かした、変幻自在な店づくり 前述の通り、「TEMIL HAIR」があるのは茨木市の中でも、人通りの多い茨木駅前からはやや離れた場所。一般的なヘアサロンとは一線を画す独自の店づくりを自由に追求するため、郊外である程度の広さを確保できるこの地を選びました。 二人曰く、「それまで、とにかくお互い忙しく働いて、疲れていて。それなりに売り上げも収入もあるけれど、なんかしんどいな……という感じでした。だから、これからはもうちょっとやりがいを感じられる、心が豊かになる働き方をしたい。自分たちの店では、例えば好きな園芸とか、美容以外のことも色々やりたいことをなんでもやってみよう! と考えての選択でした」。 練りに練って完成した店は、一見ヘアサロンとは思えないガレージ風の佇まい。店内に入ると天井が高く、開放感抜群。大きな窓からは明るい太陽の光が差し込み、施術中はどの席からも外に広がるきれいな青空や緑が楽しめます。 ちなみに、2020年のオープン時に完成していたのは、現在メインとなっている南棟の右隣にある北棟のみ。2023年に増築し、現在メインとなっている南棟が完成しました。 ▲住宅街で異彩を放つ「TEMIL HAIR」 ▲陽光が降り注ぎ、明るく開放的な店内 店内を彩る観葉植物は、ほぼ全て商品として販売しているもの。北棟にいたっては窓側スペースの多くがグリーンで埋まり、外から見るとまるで園芸店のようです。一方、店内の一角には可愛らしいアクセサリーが並ぶスペースも。地元のハンドメイド作家によるもので、こちらも商品として販売されています。 ▲シャンプーなどのヘアケアアイテムはもちろん、棚に並ぶグリーンやアクセサリーも商品 そして、内装にはさまざまな仕掛けが施されているそう。例えば、南棟のフロア中央に鎮座するサロン台は、鏡を取り外すことで、なんと(いや、なぜか)卓球台に変身! 北棟のサロン台も可動式で、複数の鏡を合わせればフロアはたちまちヨガスタジオへと変貌します。 ▲中央のサロン台が卓球台に。以前、ここでスタッフ対抗卓球大会が行われました ▲敷地内の一角には素敵な苔庭も さらに、2025年には南棟の2階を改装し、いくつかの小部屋を設置予定。それぞれ、まつエクやネイルなど色々なことができる体験ブースにする予定です。また、グリーンを見ながらゆったりと寛げる、カフェガーデンの新設も企んでいるのだとか。 あまりの変幻自在ぶりに驚かされますが、お二人は当初から進化と好奇心を大切に、シンボルアニマルとして“カエル”を掲げ、段階的に構想を練ってきたのだとか。「2020年のオープン時はオタマジャクシ、2023年の増築で足が生えて、2025年にいよいよ第3形態になる」とのこと。まだまだ店づくりは進化の途中なのです。 「TEMIL HAIR」のユニークさは、店づくりだけに留まりません。後編では、同店ならではの働き方改革やスタッフ教育、お客様との関係性づくりなどについての、独自の取り組みをご紹介します。 →【後編】はこちら -------------------------------------- TEMIL HAIR https://temilhair.jp/ 大阪府茨木市畑田町3-39 --------------------------------------
憧れの独立・開業 リアル・ストーリー 【第4回】開業届とは?
独立して自分の店を持ちたい! そんな美容師さんのために、独立・開業に向けた心がまえや具体的な手続きを徹底解説。第4回は、美容室のように個人で商売を始める時に提出する「開業届」についてご紹介します! 開業届は税務署に提出する書類 開業届(正式な名前は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます)は、個人でお店などの商売を始める時に、税務署に提出する書類です。 提出しなくても罪にはなりませんが、提出することでいろいろなメリットがあります。詳しくは後ほど説明しますね。 提出期限は、開業した日から1か月以内。提出先は管轄の税務署ですが、今はe-Taxを使ってオンラインで提出できるほか、スマホで提出できるクラウドサービスもあります。 開業届を提出するメリット 出さなくても特に問題のない書類ですが、提出しておけば以下のようなメリットがあります。 ●最大65万円の所得控除 開業届を出す最大のメリットは、確定申告の時に「青色申告」ができる点です。複式簿記が必要になるなど少々難しいのですが、所得税や住民税の対象となる課税所得から最大65万円を引くことができ、大きな節税効果があります。 このメリットを受けるためには、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。こちらは開業日から2か月以内が期限ですが、ややこしいので開業届とセットで出すと覚えておくのが良いでしょう。 ●屋号名義の銀行口座 開業届を出しておけば、屋号(店名)の名義で銀行口座を開設することができ、振込や支払いの際に信用されやすくなるなど何かと便利です。 ●赤字の3年繰越 例えば1年目と2年目がそれぞれ100万円ずつの赤字で、3年目に200万円の黒字が出たとします。この場合、最初から青色申告をしていれば、3年目の黒字を最初の2年間の赤字と相殺することができ、課税対象となる所得は実質ゼロとなるので、大きな節税効果が生まれます。 その他にも、家族への給与を経費とみなすことができたり、小規模企業の共済に入れるなど、いくつかのメリットがあります。 国税庁のホームページなども参照し、開業前に準備をしておきましょう。
わたしの独立物語 【RUKA hair make 前川 明日香さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は6年前に大阪・四ツ橋で「RUKA hair make」をオープンさせた、前川 明日香さんの独立ストーリーに迫っていきます。 ▼今回教えてくれたのは… RUKA hair make オーナー 前川 明日香さん 美容師歴19年目。大型サロンをはじめとする3店舗で美容師としての経験を重ねる。2018年に大阪・四ツ橋に「RUKA hair make 」をオープン。その人らしさはもちろん、ゲストの「その時々の気分」を汲み取ることを大切にしている。 Instagram : @maekawa__asuka ー 独立をしようと思ったきっかけは? 「前のサロンでは10年勤めていたんですが、店舗責任者という立場だったのでスタッフ教育とか任されるんですね。そうすると若い子たちがどんどん入ってきて、そしてその子たちもスタイリストになっていく。それに伴って客層も変わっていくんですよ。当時30歳だったんですが、20代前半の子が連れてくるお客様と自分のお客様が同じ空間にいることに少し違和感を感じてしまったことがあったんです。それが最初のきっかけでした。あとは、自分が独立をすることでジュニアスタイリストの子たちが更に成長をするきっかけになれば良いなと思ったので、最初は前のサロンのフランチャイズという形でお店をオープンさせました」 ー フランチャイズという形をとった理由は? 「長く働いた分、愛着もあったということと、スタッフの教育を任されている立場だったということもあって。私がまだ出来る事が残っているかもしれないし…このサロンは出るけど、いつでも相談しにきていいよみたいな感じにしたくて。そういう風に繋がっている方が良いのかなと思ったんです。なので最初の数年間はフランチャイズにして、後々完全独立するっていう形にしました」 ー 独立を決めてからオープンまで、準備期間はどれくらい? 「30歳の時にオーナーには32歳でフランチャイズで独立したいってことを伝えていました。最初の1年間は前のサロンの引き継ぎとか店舗体系を整えていきつつ、残りの1年間で自分のサロンの準備をしていったって感じですかね。店舗探しから施工まではサロンワークと並行して進めていて、オープンする1週間前まで前のサロンで働いていました(笑)。ここは元々居抜き物件だったということもあり、施工は1ヶ月くらいだったと思います」 ー 元々お店のイメージとかはあったんですか? 「そんなに派手にはしたくなくて、ナチュラルにしたというくらいですかね。あとは入口とかに植物を増やすっていうのは決まってたんです。それと小さい観葉植物とかも増えていくんだろうなっていうのは思っていて。商品やお花とか植物が増えても気持ち良く並ぶように、シンプルに抑えつつも全体の店舗のトーンや色味は統一してもらいました」 ー RUKAというサロンで大切にしていることは? 「自然体でいられること。なのでサロンの名前も光や水といった自然の要素の意味合いを持つ言葉を組み合わせて考えました。例えば40歳だからブリーチは年相応じゃないとか、何歳になったからこうしないといけないという考え方が結構苦手で。自分がテンション上がるならいいやんっていう思いが純粋にあったんですけど。でもどうしても気になる方は気にしちゃうと思うんですよね。だからこのRUKAに通われる方は、自分がいいと思うスタイルをしてもらいたし、それが手助けできるサロンであれたらいいなっていう思いでやっています」 ー 1日何人くらいのお客さんを対応していますか? 「今は完全に一人でしているので、ベースは5人ですね。それぞれキャパがあると思うんですけど、私は最初から最後まで同じテンションと空気感が一定でいける限度が5人ということがこの6年でわかりました(笑)。最初はアシスタントもいたので、5人以上でも問題は無かったのですが、完全に独立してから同じテンションでやっているとめちゃくちゃ疲れるんですよ。施術はもちろん何年もやってるから漏れがあるわけではないけれど、朝一番のお客様と一番最後のお客様に同じ金額を払っていただくのに自分の体力の関係で接客が変わるのが良くないなと思って。やっぱり疲れているのがわかるような接客をされるとお客様も心地よくないし、自分もやっていて楽しくないですし。そういう意味で基本的には1日5人という形を取っています」 ーサロンの話から少し逸れるのですが、前川さんは「香り」のブランドもされていますよね。そもそも始めたきっかけというのは? 「最初はRUKAのオープンに合わせて、調香師さんにお願いしてオリジナルの香りを調合したミストを販売していたんです。元々私が髪を切る時に「色香」っていう言葉を大切にしていて。その人のムードとか香りってなんとなく覚えているじゃないですか。この人っぽい!みたいな。それで私も髪型を作った時に、RUKAっぽいスタイルっていうものが出来ると思うんですが、そこに香りが足されると更にムードが出て良いんじゃないかと思って香りを作り始めたところからですね」 ー 美容室のオリジナルアイテムではなくブランドとして確立させた理由は? 「サロンを作るときも今もずっと思っていることなんですが、出来るだけ固定概念って無い方がいいなって思うんです。美容室だからこれを販売しているっていうのが無い方が自分の中ではやりやすいと感じたんです。もちろんそれが売りになることだってあるじゃないですか。このサロンが取り扱っているなら、安心して買えるみたいな。でもサロンは関係なく、良い物は良いし逆に美容室っていう枠があることで色々囚われてしまうように感じてしまって。そういう枠を飛び出して自由にいろんな人に広まって欲しいと思ったので、いっそのこと香りに関しては美容室と切り離して「Fyeeka(フィーカ)」というブランドにしました。今はオリジナルのエッセンシャルオイルを3種類と髪に直接つけられるバームを2種類、それとお香などをセレクトして販売しています」 ー 最後に今後のビジョンを教えてください 「ここでお花屋さんとかお菓子屋さんを呼んできて、美容室とは関係なくポップアップとかワークショップのイベントを不定期に開催しているんです。っていうのも美容室に通われる方って髪を切りに行くという共通の目的があるじゃないですか、自分自身が綺麗になるという。でもそういう場所でイベントをするとそこがちょっと崩れる。そうする事で元々出会うはずだったかもしれないけど、今まで出会ってこなかった人たちがサロンに集まったりする。逆にインスタを見ていて、別に髪を切る用事はないけどサロンは気になるみたいな人も気兼ねなく来れるんですよね。そういう出会いを提供できる場作りはこれからもしていきたいと思っています。でも全く一緒の人を集めたいわけじゃなくて、今までの概念を崩してくれる人との出会いがあれば更に良いですね。そうなるともっと楽しいんじゃないかな。元々このサロンの空気感が好きで通ってくれている人たちなら尚更、この世界観での新たな出会いを通して違うことにチャレンジしてみようかなって思うきっかけになって欲しいですね。例えば髪型も50歳過ぎてからでも金髪にしても良いんだ! みたいな、そういうきっかけを楽しんでもらえる場を提供し続けたいです」 独立しようと思ったきっかけから、サロンでの大切にしていること、そして香りのブランドに今後のこと。全てが「自然体であること」「枠にとらわれないこと」という軸を持ってチャレンジしている姿勢がとても素敵でした。貴重なお話を聞かせていただいた前川さん、ありがとうございました!また次回の物語をお楽しみに。 <SALON DATA> RUKA hair make/ルカ ヘアメイク 大阪市西区新町1-8-10 HP : https://www.rukahairmake.com/ Instagram : @rukahairmake
憧れの独立・開業 リアル・ストーリー 【第3回】美容室とインボイス制度
独立して自分の店を持ちたい! そんな美容師さんのために、独立・開業に向けた心がまえや具体的な手続きを徹底解説。第3回は美容室の経営とインボイス制度の関係をご紹介します。 ------------------ インボイス制度について 最近、「インボイス制度」という言葉があちこちから聞こえてきますね。これは消費税に関する新たな制度で、2023年10月から適用が始まります。まずは簡単に制度の紹介をします。 お店や会社を経営していると、お客さんからお金をもらったり、仕入先や外注にお金を払ったりします。その際、消費税も受け取ったり払ったりしますよね。この消費税は、当然ながら税務署に納める必要があります。 納める消費税の額は、自分たちが受け取った消費税から、支払った消費税を差し引いた額になります。この、支払った分を“差し引く”ことを「仕入税額控除」と呼びます。 また、これまで年間の売上が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」として消費税を納める必要がありませんでした。しかし、10月以降は、この「免税事業者」のままの仕入先からの請求書では、仕入税額控除を受けられなくなります。控除を受けられるのは、課税事業者として国税庁に登録した仕入先(=適格請求書発行事業者)からの請求書のみとなります。 これが大まかなインボイス制度の概要ですが、詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。 では具体的に、美容室の経営にどのような影響があるのか見ていきましょう。 仕入先は課税事業者? 美容室を経営していると、ヘアケア製品やさまざまな資器材を仕入れると思います。また、宣伝のためのツール制作を依頼することもあるでしょう。 それらの発注先が免税事業者の場合、そこに支払った消費税を差し引くことができず、結果的に納める消費税額が多くなってしまいます。発注先を選定する際に、念のため確認した方がよいでしょう。 美容師を業務委託する場合 お店を大きくしたい場合、自分以外にも美容師を雇うことになると思います。従業員として雇用する場合は特に関係ありませんが、業務委託する場合にはインボイス制度の影響が出てくる可能性があります。 委託する美容師が免税事業者の場合は仕入税額控除が受けられなくなりますので、適格請求書発行事業者になってもらうよう交渉が必要になるかもしれません。 いずれもお店の規模や経営方針によって対応は変わってくると思います。また、急激な負担の増加を防ぐための経過措置も用意されていますので、詳しく調べてみましょう。
わたしの独立物語 【YAYKA 森川 智さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は京都の四条烏丸エリアで2022年4月にオープンしたヘアサロン「YAYKA」の代表、 森川 智さんの独立ストーリーに迫っていきます。 教えてくれたのは… YAYKA 代表 森川 智さん 京都の老舗デザイナーズサロンYAYOI〜BRAINSから独立し、2022年4月に「YAYKA」をオープン。個性を引き立たせるデザインを軸に、京都の街で新しいブランディングを目指して奮闘中。 Instagram : @morikawa3104 ー 独立を考えたきっかけは? 「実は独立願望って元々は無かったんです。前のサロンでは18年間在籍していたんですが、アシスタントからスタイリストを経て色々と経験を積んでいく中で、目標が出てきてはクリアしていくということを繰り返してきたんですよね。でも長く働いていると、この環境で自分がもっと成長することって出来るんかな?ってふと考えたことがあって。その時に先が見えなくなってしまったので独立を決意しました。やっぱり自分が成長をしていくためには、環境を変えた方がいいなって思った部分が大きかったので」 ー 独立を決意をしてからオープンまでどれくらいかかった? 「辞めようと思ったのは、15年目くらいの時。当時はクリエイティブディレクターという現場ではトップのポジションで働いていました。辞めるという話になった時、僕も長い間そのサロンで働いていたということもあって、会社としても最初は残って欲しいと言われて…。話し合いを重ねて、最終的には独立という形になりました。なので結局3年位はかかったと思います」 ー サロンの「YAYKA」(ヤイカ)にした意味は? 「これは造語なんですが、まず「 YAY(ヤイ)」っていうのが英語のスラングで。意味としては、嬉しさや喜びとか、達成感を感じたときに使われるんですね。それと日本語で「八重日(やえか)」という言葉があって。これは日々を重ね続けていくっていう意味があるんです。この二つの意味を掛け合わせて、嬉しさや喜びを重ね続けられるサロンでありたいという意味を込めてこの名前をつけました」 ー 素敵な言葉ですね。サロンの内装はどういうイメージで作られましたか? 「シンプルかつスタイリッシュな中にも、温かみを感じられるようなイメージで…。冷たさと温かさのバランス感は意識しました。オシャレでシュッとしすぎていたらちょっと落ち着かないじゃないですか。美容室って服屋さんとは違って、1回来たら1時間〜2時間は滞在してもらわないといけない。それでもアットホームにはなり過ぎないようにしながら、居心地が良いと思ってもらえる空間作りを意識しました」 ー サロンの内装で特にこだわった場所は? 「壁なんですけど、クロスとかじゃなくてこれ全部手で塗ってもらったんです。人の手の温度感が伝わるような空間にしたかったので。あとはカウンターが1枚板で繋がっているところ。最近はコロナ禍ってこともあって、1席1席区切ったサロンも増えたと思うんですよ。でも美容室の醍醐味って、同じ空間に色んな人がお客様にいて、横の会話が聞こえたり、僕ら美容師を通して会話が生まれたりとか…そういう横同士で繋がっていく楽しさもあると思うんです。一人ひとりがこのサロンに足を運んで、この場所に座っている。そういうお客様で繋がっているということを表現したくて繋げました」 ー 少し踏み込んだ質問になりますが、独立資金はどう工面されましたか? 「正直あんまり貯金とかしたことがなくて。元々独立願望も無かったのでその為に貯金をしたわけでは無いですね。ただ、勝手に貯まっていました(笑)。頑張ったら頑張っただけ給与が上がっていくので、そういう形で見知らぬうちに貯まっていたといいますか。まあ、18年間もいたのでね(笑)。でもその貯まっていたお金だけで開業した訳ではなくて…。それだとかなり貯めていないと難しいと思います。借りたい金額の2〜3割程度手元に自己資金として用意しておくことが大切かなと。貯金ゼロの人にいきなり1000万円を貸すっていうのはリスクじゃないですか。なので貯金があればあるほど貸してくれる幅が広がるって感じですよね」 ー オープンしてから実際どう感じていますか?大変?? 「そうですね…。やっぱやる事は多いなって思いますが、純粋に楽しいですね。雇われていると当然会社の方針もあるし色々と事情を合わせながらやっていかないといけなかったんですが、自分がやりたいって思ったことをダイレクトにアクションを起こせるっていうのはやりがいがあるなって感じます。もちろん責任は伴いますが…。大変だと感じることはサロンワーク以外の業務。今までは知らないことだらけだったので、独立してから知ることも多かったです。税の計算とか経理的なことは苦手ですが、社会勉強だと思ってやっています」 ー 今後のビジョンを教えてください 「僕が一番やりたいことは美容師を育てることなんです。なので、これからスタッフも増やしていって良い美容師に育って次の店舗を建てれたらなって思っています。今は僕とアシスタントの2人なんですが、10月から1人新しくスタッフも増えて、来年の春には新卒で入社してくれる子も決まっているんです。なので2年後を目標にまたこのエリアで、サロンのコンセプトを変えて違う雰囲気のお店を出店できたらなと思いますね」 自分軸でのビジョンではなく、良い美容師を育てたいという今後を描いている姿勢がとても印象的でした。京都の街に素敵なサロンが展開されていく将来が今からとても楽しみです。お話を聞かせてくれた森川さん、貴重なお話をありがとうございました! また次回のお話をお楽しみに。 <SALON DATA> YAYKA /ヤイカ 京都市中京区六角通大黒町76-2 Instagram : @yayka_kyoto
大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃④
スタイリスト歴16年の美容師と元ウェディングプランナーの的場さんご夫妻が営む『DOUBLE M』は、2023年2月に大阪・北加賀屋にオープンしたばかりの新サロン。サロンの特徴、開業準備、役割分担、今後の目標など、お二人のリアルなエピソードを全4回にわたってお届けします。 →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃①はこちら →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃②はこちら →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃③はこちら 左:オーナー/スタイリスト 的場 千敏さん 石川県出身。22年間勤めた大正区のサロンから独立。きめ細やかで丁寧なカウンセリング・スタイリングで、お客様一人ひとりの理想を叶える。 右:アシスタント/エステティシャン 的場 麻美さん 大阪府出身。受付や経理、着付けなどヘアスタイリング以外の部分で千敏さんをサポート。その傍ら、店内の一角でエステサロンも営む。 いつかサロンとともにカフェの経営も実現したい ―例えばSNSなど、サロンを周知してもらうための取り組みは? 千敏:本来であればInstagramでも定期的に発信してフォロワーを増やしていきたいところですが、今はスタイリストが私一人だけなので、正直なところセーブしている部分もあります。まずはサロンに来てくださったお客様一人ひとりを丁寧にカウンセリング・スタイリングすることで、信頼をコツコツと積み上げていくことが先決だと思っています。 麻美:それに、知らないお客様同士がこの狭い空間にいるのは、きっと気を遣うはず(笑)。ゆったり寛げる空間を提供し、ファミリーで来ていただけるサロンのコンセプトに反してしまいますからね。その分、お客様の予約が時間帯によってぽっかり空かないように気を付けています。 ―今後、チャレンジしてみたいことはありますか? 千敏:今のやり方がしっくりきているので、当面は維持していこうかと思っています。ただ、私も妻もカフェ巡りが好きなので、いつかサロンに併設する形でカフェも経営できれば最高ですね。店頭の木製の格子窓からコーヒーを手渡したいなとシミュレーションしています(笑)。ここを地域の憩いの場にすることが今の夢ですね。 麻美:私は何より、美容師免許を取得することが先決です。あとは着付けやエステを身に着けたので、次はまつ毛・眉毛にもトライしてみたいですね。夫がヘア、私がその他の美容を担当できれば、このサロンの可能性はまだまだ広がると思います。 千敏:つまり、このサロンの伸びしろですね(笑)。キーパーソンは妻で間違いないです。 夫婦二人三脚でサロンのオープンに至った的場さんご夫妻。「お客様一人ひとりを大切にする」という強い想いのもと、コンパクトな店舗でプライベート空間を演出し、それぞれの個性を合わせたお二人ならではのサロンワークが印象的でした。ご夫婦でのサロン経営、地域密着型のサロン経営を考える際の参考にしてみてはいかがですか? <SALON DATA> DOUBLE M(ダブルエム) 大阪市住之江区北加賀屋5-6-18 リアライズ北加賀屋T02 Instagram :@double_m_hair