#3 iki オーナー 中 昌幸さんの美容道
『美容道』。それは美容師人生を歩んでいく中で、それぞれが理想を追い求めて突き進んでいく道のこと。そんな険しくも輝かしい道を歩み続ける方々を招いて、パーソナルな部分を紐解きながら各々の美容道に迫っていくというこの企画。第3回目となる今回は、実力派スタイリストでありながら、「Vendange」「iki」のオーナーでもある中 昌幸さんをお迎えしました。サロンだけでなく、飲食のプロデュースや堀江のスタンド「最高ピーポーOSAKA」も経営するなど、多彩な顔を持つ彼のアイデンティティとは。 ー本日はお忙しい中ありがとうございます。まずは、こちらから投げかける単語から連想するものをファーストインスピレーションでお答えください。その後、それぞれの回答の理由を教えてください。 ー学生時代 「ファッション」 「高校生の2年生の時、人生のターニングポイントがあったんです。普段は制服だったんですけど、クラス遠足は私服だったので、そのためにクラスの目立ってるスケーターの子やバンドの子たちにアメ村に買い物に連れて行ってもらって、全身一式買ったんです。それで遠足の当日、バスに乗り込んだ瞬間に女子全員が褒めてくれたんですよ。そこからファッションが好きになりましたね」 ーファッション 「雑誌」 「ファッションって雑誌からだったんですよ。当時はインターネットがなかったので、雑誌で情報収集して、ファッション関係の仕事に就きたいなと思っていた時期があります。その後ヘアメイクという仕事があるっていうのを知って、美容学校に行ったんです。それが美容師になるきっかけですね」 ー推し 「コーヒー」 「のめりこんでしまって。10年くらい自宅で自家焙煎して、サロンでおもてなしの一環として提供してたんですけど、最近業務用の焙煎機を買ったんですよ。それでスペシャルティコーヒーの豆も買って。奥が深いんで、どんどんのめり込んでいって…。なんでも仕事につなげるタイプなんで、お客さまが喜んでもらえたりすると付加価値になるかなと」 ー欲しいもの 「ない」 「なんかね、すぐ買っちゃうんですよ(笑)。欲しいな、欲しいなってずっと悩むっていうことがあんまりなくて。直感で「あっ」て思ったらすぐ買っちゃう。よっぽど高いものは別ですし、自分の中の費用対効果みたいなものは意識はしますけど、焙煎機と同じで、それで満たされることが大事。それに、そこで終わらずに仕事につなげるようにしていますね。すごく欲しいものしか買わないので、買って後悔することはないです」 ーパートナー 「妻」 「例えばお笑い番組を家族で観ていても、僕は爆笑して声に出したりテレビに話しかけたりしないんですよ。でも奥さんはマラソン観てても「がんばれ~っ!」て言ったりしてて。それって新鮮で。なんかほっこりしていいなって思うんです。僕は心の中で「ふふん」って笑うくらいなんで。そういうのが奥さんとは真逆で、やっぱり真逆のものには惹かれますね。あとは宝物である息子を共有しているパートナーでもあります」 ー食 「趣味」 「好きになると本当に掘り下げちゃうんです。普段何気なく食べてるものでも、「美味しいな」で終わるんじゃなくて、これがどうやってできてるんやろってすぐ調べてしまう。それで、それを作ってる時がすごくわくわくするんですよ。例えば生ハムだと乾燥して寝かせていくんですけど、その過程で生ハムの香りに変わってくる瞬間があるんですよ。料理ってプロセスが楽しい。この前、尼崎の立ち飲み屋に行ったんですけど、駅からの田舎道でお父さんとお子さんが川でサリガニ釣ってたんですよ。そういう予期せぬことも含めて、新しいお店に行くのもすごく楽しみですね。気づきがあって」 ーサロン 「中心」 「今、化粧品のプロジェクトと飲食店、美容室経営、フードのプロデュースをやってるんですけど。いろんな仕事させてもらって、いろんな人と会って、なんか自分ってなんだろうなって思うんですけど。やっぱり美容師としての自分を見てほしい。あくまで美容室のオーナーがやってる飲食店。美容室のオーナーがやってる化粧品。美容師としての自分が一番しっくりくるというか。美容師が本業というのは変わりないですね」 ー美容師 「無くてはならないもの」 「美容師の本質って「あなたに出会えてよかった」だと思うんです。僕は髪の毛だけじゃなくて、美味しいごはん屋さんも教えたいし、お肌がきれいになる化粧品も教えたいし、いけてるグッズだったり、自分からアウトプットしてお客さんがインプットしてくれればなっていうのがあって。それが自分らしさかなって思います。ヘアスタイルだけでは人はきれいにならないっていうのが、今まで美容師として追求してきた僕の答え。本当に美容師やってきてよかったなって思うし、ファッションから美容に行こうって決断して本当によかったなって思います」 多彩な分野で活動する中さんのスタイルは、これからの時代のお手本かもしれません。ついつい聞き入ってしまうインタビューの全貌は、ぜひ動画でチェックしてみてください! #3 iki オーナー 中 昌幸さん Instagram : @nakamasayuki <SALON DATA> iki/イキ 大阪市西区南堀江2-11-8 tel : 06-6568-9745 http://iki-salon.jp/ Instagram : @iki__salon
#1 PARKiiiNG 代表 野田和宏さんの美容道
『美容道』。それは美容師人生を歩んでいく中で、それぞれが理想を追い求めて突き進んでいく道のこと。そんな険しい道を前向きに歩み続ける方々を招いて、パーソナルな部分を紐解きながら各々の美容道に迫っていくというこの企画。記念すべき第1回目は、堀江の「PARKiiiNG」、そして心斎橋で「alu」というヘアサロンの代表を務める野田和宏さんに登場していただきます。2店舗を経営しながらも美容師という枠を越えて、大型野外フェスまで開催した彼の素顔とは。 PARKiiiNG 野田さんのインタビュー動画はこちら ー本日はお越しいただきありがとうございます。早速ですが、こちらがお伝えする単語から連想するものをお答えいただき、それぞれ理由を教えてください。 ー学生時代 「水泳」 小学校から大学生までのトータル12年間やっていました。親が高校の先生なんですけど、大学には進学して欲しいと言われていて。でも自分自身は高校生の時からすでに美容師になりたかったのでかなり葛藤しました。結局その時は美容師の道を選べずに体育大学へ進学したんですけど、在学中に故障してしまって…。それで急に大学の中でする事が無くなっちゃったんですよね。でも大学でスポーツマーケティングっていう勉強をしていて、それにハマったこともあり、大学に通いながら夜間で美容学校にも通って卒業して。遠回りしたけど、最終的には美容師の道へ歩み出しました。 ーヘア 「自己表現」 学生時代は某コーヒーショップのバイトでコミュニケーションをとる練習をしたくらい苦手だったんですよ。そんな自分の唯一の自己表現ってファッションとかヘアだったんです。髪を変えると気づいてもらえて話してくれる。だから皆と同じ髪型は嫌。自分のことを見てほしい、気付いてほしいという意識はずっとあったんだと思います。でも前に出ることが向いていない自分もいて、そんなチグハグなバランスを髪を通して自己表現することで解消していました。今は自分のこともわかるようになって、らしくいれるようになってきた。良い意味でやっと諦められた感じがしますね(笑) ー宝物 「思い出」 あまり物を所有したいという欲が無いんですよね。体験とか経験は自分の中でしか残らないのでそういう意味で思い出と答えました。数多くの思い出があるんですが、印象深いといえば24歳の頃。まだ前のサロンで働いていて、当時の師匠に1年間くらい指導していただいてました。大きな出来事があった訳では無いですが、日々言われていることを取り組んでいって、それから26歳くらいで自分の在り方を変えられた。そういう経験が宝物なのかもしれないです。 ーパートナー 「パズルみたいなもの」 僕「PARKiiiNG」っていうサロンの立ち上げメンバーなんですけど、相方がいるんです。その相方とは全然スタイルも違うし、そもそもの表現も違う。でも仕事のやり方とかマインド的なところはちゃんと当てはまる。そういうピースがはまる人ってなかなか出会えないですよね。もちろん意見が違うこともありますが、その度にちゃんと擦り合わせることができる。それって結局上下関係とかは全然関係なく同じ熱量で仕事をしていないと出来ないことだと思うんですよ。相方とはしっかりとパズルのピースがハマったように感じます。 ーPARKiiiNG 「自由人の集団」 というよりか、自由になりたい人の集団かもしれないですね。そういう人が集まって空間やブランドをシェアしている感覚。経営者って本当の意味で自由ですけど、リスクがついてくる。なので経営者っていう位置に上がってこない人って多いんだろうなと考えた時に、有効活用してもらえる箱づくりをしようと考えたんです。本当に見えないところに一応柵はあるけど、その中で自由にしていいよっていう感じで会社のルールを設けています。なので、うちはスタイリストになったら全員横一線なんです。店長とかディレクターとかは作らない。皆横一線で、組織としては円柱になって上に上がっていくイメージ。皆で共に生きるという形なので、そこには上下関係はいらないと思っています。 ーフェス 「アート」 先日「PARK IN PERK」というフェスを名村造船所で開催したんですが、入口から出口まで作ったイベントそのものが僕の中では自分のアートワークとしてやったって感じです。「Park」はうちのサロンの名前から取っているんですけど、「InPark」は衝撃という意味があって、ここに来て何かを持ち帰ってもらいたいなと思ってこの名前になりました。今回が一発目ということで、音楽とファッション、アート、フードと美容の5つのカテゴリーで構成して、1000人規模で開催。特に音楽イベントにこだわった訳ではなく、それぞれのカルチャーに触れたことがない人たちに取って、こんな世界があるんだなっていう発見があれば良いですし、僕が表現するイベントを通して何か衝撃を受けてくれたらいいなと思います。 ー美容師 「手段」 どういう人生を歩んで、夢を叶えて、どんな人間になりたくて…ということで言ったら美容師は目的でもなければ夢でも無い。最初は生活をするための手段で、今はコミュニケーションをとるための手段って感じです。でも最後は自己表現に変わっていくような気がしています。そうなれるように撮影のトレーニングなどもしているし、美容師人生の最後には何かスタイルを残したいという気持ちは最近芽生えました。今後はそういう部分に挑戦していきたいですね。 ーあなたの美容道とは 僕は「純」という漢字を選びました。子供の頃のようなピュアな感情って大切だと思うんです。もっといろんなことを体験して純粋な気持ちで吸収していきたいです。 自分の経験や体験を通して表現をストックし、新たな道をどんどん開拓していく。野田さんのそういう姿がとても印象的でした。気になるインタビューの全貌はぜひ動画でチェックして下さいね! #1 PARKiiiNG 代表 野田和宏さん Instagram : @noda_kazu_parkiiing <SALON DATA> PARKiiiNG(パーキング) 大阪市西区新町1-25-17 フィル・パークHS新町 3F B-2 tel : 未設 https://www.parkiiing.com Instagram : @parkiiing_hair
人と地球にやさしいシザーケースができるまで。 MASHU×関西SDGsユースアクションプロジェクト【後編】
大阪で美容室を展開する「MASHU」が関西SDGsプラットフォーム団体と共に「SDGsインターンシップ」を実施し、参加した大学生が「人と地球にやさしいシザーケース」を企画・考案。そして「公益社団法人2025年日本博覧会協会賞」を受賞し商品化をしたことで話題を集めました。【前編】ではそれぞれが活動に参加する経緯とSDGs教育の必要性について、【中編】では美容室のSDGsの実態やプロダクト制作の背景についてお話していただきました。最後となる【後編】では苦労が尽きなかったというシザーケースの試作・改良から完成までとこれからのことをお話いただきます。 ▼今回教えてくれたのは (左)MASHU オフィス室長 / 企画部部長 中島 盾さん 2009年にMASHUへ入社。10年近く美容師としてサロンワークの経験を積み、現在は本部業務を主に担っている。 (中)甲南大学 法学部 3年生 村下萌々絵さん 大学2年生の時にSDGsインターンシップに参加。その後「人と地球にやさしいシザーケース」を企画・考案。 (右)関西SDGsプラットホーム 教育分科会SDGSナレッジラボ 事務局長 牧 文彦さん NPO法人Deep peopleの理事長も務める。MASHU・会長増成氏とは長いお付き合い。 ーではいよいよシザーケースについてお伺いしていきたいのですが、課題発見から完成までどれくらいの期間かかったのでしょうか? 牧:「本当に1年くらいはかかったよね」 村下:「そうですね。最初の美容師の方に取材と革職人に伝えるところまでの1往復はインターンシップ中にあったんですが、それ以降は完全に一人でした」 牧:「結構やりとりがありましたね。結局7〜8回は試作を作ったんじゃないかな。ダメ出しは毎回貰っていたし…(笑)」 村下:「指摘いただいた問題点を改良しては実際に美容師の方に使っていただいてて。大体2週間ほど使用期間を設けていたので、やっぱり時間はかかりました」 ーかなり改良を重ねられたんですね! 例えばMASHUさんからはどんな要望があったんですか? 村下:「最初の取材では後ろの部分にスマホを収納できるようにして欲しいと言われていました。でも結局それは使っているサイズも人それぞれだし、1日中使うものだから重いよりも軽い方が良いということで無しに…」 牧:「いろんな要望はあったんですよ。例えばこのベルトみたいなところとか。ここにはダッカールを入れるのに必要だとか、ハサミを入れるのに何個ポケットがいるのかとか、そういう基本的なことは初めの取材で彼女たちは見せてもらってたんです」 村下:「実際に使っているシザーケースを見せていただいて、全ての部品を測らせていただいたり、解体までさせていただいて基礎的な部分は教えてもらっていました」 ー全てのパーツが分解されるみたいですが、他のシザーケースでここまで分解されることってあるんですか? 中島:「多少はあると思うんですけど、ここまでは中々無いと思いますね。障がい者の方が作りやすいように設計されていることで、全てのパーツがボタン化されて解体しやすくなっていると思うんですが、美容師側の機能面を考えてもそれが良かったりする。僕もかつて美容師やってたのでよくわかるんですけど、シザーケースってめっちゃ汚れるんです。あとはハサミを何回も出し入れするので一部だけ切れてしまったり、傷んじゃったりして。そうすると勿体無いけど買い替えないといけないんですよ。だからその汚れたり切れてしまったパーツだけを買い替えることができるっていうのは良いですね。それが作ってくださる場所に還元されているなら尚更」 牧:「本当に障がいを持っている方々が心を込めてこのシザーケースを手作りで作っていただいている。彼らの工賃って本当に低いんですよね。でもこの仕事に関しては普通の人と同じだけの賃金が発生している。だからこういう仕事が生み出されたということが社会に大きなインパクトを与えているんですよね」 中島:「そういうことをこのシザーケースを使っていく中で感じ取ってくれたら嬉しいなって思いますね。やっぱ道具って自分のためにっていう意識になるじゃないですか。みんなそれぞれ色んな葛藤を抱えている中で、これに携わっている自分がこの部分だけ交換してまた使おうってなった時に実はすごく良いことをしているってちょっと気分よくなりますよね。それって目には見えないところだけど、そういう方々の仕事に影響しているんだとか、道具を捨てずに済んだとか、そういった部分で感じるものが出来て欲しいですね」 ー双方にとって嬉しい設計になっている上に良いことを与え合っている関係に気付くとさらに使いがい、そしてやりがいを感じられますね。このシザーケースの試作を重ねていく上で一番苦労したことってありますか? 牧:「ある程度完成ってなった時にサイズはコンパクトなのがやっぱり良かったと言われた時にはもう…全部ゼロに戻るんで…。組み上げていってようやく出来るなあって話していた時だったのでかなり戸惑いましたね。「え、これサイズ変えるの?」って言って…」 村下:「そこから結構…。また何回かやりとりを繰り返しました(笑)」 中島:「本当ひどい話だよね(笑)」 村下:「あとは体格にもよるので、女性と男性で欲しいサイズ感が違ったのも結構難しかったです。女性は肩からかけるんですけど、男性は腰につける。やっぱりそのあたりの違いも大変でした。完成品は肩用と腰用両方で使えるようにしています」 ーそんな苦労を乗り越えて、最近商品化が実現したそうですが、今はどうやって販売されているんでしょうか? 牧:「oveさんのWEBサイトで受注生産という形で今販売しています。大体お届けまでは1ヶ月程度。7色展開でパーツごとに組み合わせ自由なので結構悩まれるみたいですね。あとはオプションでカラー用のグローブを留めておくためのパーツも1980円で販売しています。MASHUプロデュースなのでぜひ使っていただきたいですね」 中島:「買い替えのタイミングもあるかもしれませんが、ぜひ使って欲しいと思ってます!」 ー最後に今後の活動についてお伺いしたいのですが、村下さん自身の今後はどのように考えています? 村下:「個人的な話になっちゃうんですけど、今大学3年生なので就活の準備をしていて。最初はSDGsを取り組んでいる企業で就職できたらなって考えていましたが、自分の中でこの業界で特に取り組みたいっていうものが無かったんです。入社してすぐにSDGs問題に取り組める訳でもないですし…。そういうことを考えた時に公務員を目指して実際に行政に携わる方が自分のやりたいこともできるんじゃないかと思ったので、今は公務員を目指しています。自分ができる範囲でSDGsの活動は続けていきたいです」 ーとても素晴らしいですね。では改めてMASHUさんではどうでしょうか?美容室としてSDGsの問題を今後どうやって取り組んでいきますか? 中島:「まずは一人ひとりが意識をするところが大事だなって今回の取り組みを通して感じました。SDGsってキャンペーンではないと思うので。特別何かしないといけないって思いがちなんですけど、それよりかは普段の営業の中でどれだけの廃棄を削減できるのかとかそういう少しの配慮が一人ひとり出来るようになると良いのかな。細かいところで言えば、タオルをティッシュのようにめちゃくちゃ枚数を使っていた過去があって。その1枚のタオルで何が出来るのかって改めて考え直したんです。結局そういう意識で経費削減に繋がったりとか、それが従業員の待遇に繋がったりとか。それで環境にも良くなるし社員の満足度も上がることになる。そういう細かい部分も含めて、お客様の意見を取り入れながら行動していけると良いですね。今回大学生の方々に気付かされる部分がとても多くて、きっかけを与えていただいたと思っています」 一人ひとりのちょっとした意識の変化が社会にとって良い影響をもたらすかもしれない。そんな気付きを与えてくれたお話でした。2025年の大阪万博も控えていることもあり、さらにSDGsはより注目度も加速していくのかもしれません。貴重なお話を聞かせていただいた牧さん、村下さん、中島さん。ご協力いただきありがとうございました! <SALON DATA> Lumier de Mashu / リュミエドウマッシュ 大阪市北区中崎西2-4-12 梅田センタービル1F西別館 HP : https://mashu.jp/ Instagram:@mashu_group
人と地球にやさしいシザーケースができるまで。 MASHU×関西SDGsユースアクションプロジェクト【中編】
大阪で美容室を展開する「MASHU」が関西SDGsプラットフォーム団体と共に「SDGsインターンシップ」を実施し、参加した大学生が「人と地球にやさしいシザーケース」を企画・考案。そして「公益社団法人2025年日本博覧会協会賞」を受賞し商品化をしたことで話題を集めました。【前編】ではそれぞれが活動に参加する経緯とSDGs教育の必要性についてお話していただきました。今回は美容室のSDGsの実態やプロダクト制作の背景についてのお話です! ▼今回教えてくれたのは (左)MASHU オフィス室長 / 企画部部長 中島 盾さん 2009年にMASHUへ入社。10年近く美容師としてサロンワークの経験を積み、現在は本部業務を主に担っている。 (中)甲南大学 法学部 3年生 村下萌々絵さん 大学2年生の時にSDGsインターンシップに参加。その後「人と地球にやさしいシザーケース」を企画・考案。 (右)関西SDGsプラットホーム 教育分科会SDGSナレッジラボ 事務局長 牧 文彦さん NPO法人Deep peopleの理事長も務める。MASHU・会長増成氏とは長いお付き合い。 ーSDGsインターンシップについてお伺いしていきたいのですが、これはどういった取り組みなんでしょうか? 牧:「これは問題解決型インターンシップって言って、すでにMASHUさんの方からSDGsの課題は提示されていたんですよね。なので初日にオーナーの増成さんから予備情報をレクチャーしてもらったんです。インターンシップは5日間という短期間でしたが、そこで取り組めるのは一体なんだろうかということ話し合って、今回のシザーケースのプロジェクトが動いていったという流れですね」 村下:「その5日間が終了した後に「SDGsユースアクション」の応募を目標にして引き続き参加しないかっていう風に牧さんからお誘いいただいて。インターンシップの期間中は参加していた方が他にも数名いましたが、最終的には1人で活動を続けました。参加したのが大学2年生の夏だったので、ちょうど今で1年ですね」 牧:「彼女は問題意識がすごく高い。そしてMASHUさんも問題意識が高いんです。普通は環境問題のこととかあまり疑問に思わないですよね。でもMASHUさんはそれを何とかしないといけないという危機感を持っている。だからこういう活動が実現できたんだと思います」 ー実際に美容室のSDGs事情を知ってどう思いましたか? 村下:「美容室だけでSDGsという問題に取り組むことの難しさを実感しました。例えばカラー剤によって環境汚染されているという課題をお話いただいたのですが、実際にカラー剤を作っているのは美容師ではなく、別の企業だったり業界だったりする。美容室の本業は髪を染めたり、切ったりするところなので、そういった点で美容室だけで取り組むことって難しいんだなって。いろんな業界を巻き込まないとなかなか取り組めない課題なのかなと」 中島:「僕らも自社製品のパッケージを改良したりとか、詰め替えを推進したりとかはしていますが、やっぱり難しいんですよね。言っていただいた通り、美容師の仕事ってお客様を可愛くしてあげることが本業。でも自分たちが毎日する仕事で、これってすごい化学物質入ってるよなとか、髪の毛の廃棄量を増やしてるんじゃないかなとか。でも忙しくてそこまで考える余裕は無いし…みたいな。どこかで何かの葛藤は抱えている。なので、今回提案いただいたシザーケースってすごくこれから伸びると思うんです」 ーそういった課題があって今回のシザーケースが誕生したんですね。これはシザーケースにした理由とかってあるんですか? 村下:「シザーケースって美容師さんの中でも一番使われる道具なので。皆さんに取り組んでもらいやすいっていう観点から選びました。あとは長年愛用される方がほとんどで、愛着が湧くって美容師の方がおっしゃっていたので。その分時間をかけて吟味されるだろうし、選ぶ段階でこういう商品だって分かってもらえたらSDGsを知っていただける機会に繋がるのかなって思って」 中島:「確かにシザーケースって結構意味のあるアイテムだと思います。専門学校を卒業してから数年アシスタント時代を経て、デビューしてからようやく初めてハサミを持つことができる。シザーケースにシザーを入れるっていうことは美容師にとって重要な意味を持つんですよね。自分にとっても思い入れがある大切な道具にプラスの意味で社会の役に立っているってすごく良いですよね。目をつけていただいたところが素晴らしいなって思いました」 ー確かに自分が使っている道具で人や社会の役に立っていると分かれば嬉しいですよね。ではこのシザーケースを使うことで具体的にどんな問題を解決できるんでしょうか? 牧:「このシザーケースにはMASHUさん以外にも、試作・設計をしてくれた革製品を扱う株式会社oveさんと製造部分を担ってくれた福祉作業所アソシアさんのご協力のもと完成したものなんですよね。そしてそれぞれ違う課題を抱えているんです。例えば、oveさんは格差による貧困問題について取り組んでいる企業だし、福祉作業所のアソシアさんだったら障がい者雇用をされていて、低賃金の問題や仕事内容が制限されてしまうといった問題がある。今回は共同開発ということで、oveさんに生産過程において廃棄物が少なく、障がいを持っている方でも作りやすい設計にしていただきました。その結果革製品は単価が高いので賃金も高くなるし、技術を身につけて将来自立できる力をつけることができる。このシザーケースを美容師の方に使っていただくことで結果的に新しい雇用を生み出している。そうやって良い作用が循環しているっていう感じですね」 SDGsになかなか取り組めない美容室、障がい者の低賃金と自立することが難しいという問題を抱える福祉作業所、そして格差社会の問題に取り組む革製品を扱う企業。それぞれが持つ課題を一緒に取り組んだことでお互いに解決させることが出来たという村下さん。そんなシザーケースが完成するまでの苦労が尽きなかった試作・改良編〜これからのことについては【後編】でお話していただきます!次回もお楽しみに! <SALON DATA> Lumier de Mashu / リュミエドウマッシュ 大阪市北区中崎西2-4-12 梅田センタービル1F西別館 HP : https://mashu.jp/ Instagram:@mashu_group
人と地球にやさしいシザーケースができるまで。 MASHU×関西SDGsユースアクションプロジェクト【前編】
【SDGsとは】 2030年までに世界中にある環境問題や差別・貧困・人権問題といった課題を解決していこうと掲げられた17の持続可能な開発目標のこと。 近年よく耳にするようになったこの言葉。ヘアサロンでもSDGsを積極的に取り組むサロンが多くなっているように思います。そんな中、大阪で美容室を展開する「MASHU」が関西SDGsプラットフォーム団体と共に「SDGsインターンシップ」を実施。そしてこれに参加した大学生が「人と地球にやさしいシザーケース」を企画・考案し「公益社団法人2025年日本博覧会協会賞」を受賞、そして商品化をしたことで話題を集めました。今回は関西SDGsプラットホームとMASHUの関係性、そしてシザーケースが完成するまでの制作の裏側を全3編でお届けしていきます。 ▼今回教えてくれたのは (左)MASHU オフィス室長 / 企画部部長 中島 盾さん 2009年にMASHUへ入社。10年近く美容師としてサロンワークの経験を積み、現在は本部業務を主に担っている。 (中)甲南大学 法学部 3年生 村下萌々絵さん 大学2年生の時にSDGsインターンシップに参加。その後「人と地球にやさしいシザーケース」を企画・考案。 (右)関西SDGsプラットホーム 教育分科会SDGSナレッジラボ 事務局長 牧 文彦さん NPO法人Deep peopleの理事長も務める。MASHU・会長増成氏とは長いお付き合い。 ー今回はお集まりいただきありがとうございます。まずは簡単に関西SDGsプラットホームについて教えていただけますか? 牧さん(以下敬称略):「2025年に大阪万博が開催されますよね。そのテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」ということで、SDGsがテーマなんですよね。それなのに、関西の人たちが全くSDGsを知らない、全くやっていないってなると、大変なことになるじゃないですか。だから色んな団体や企業に入っていただいてこのプラットフォームが発足しました。最初は100くらいの団体だったんですが、今は1800以上の団体で活動しています」 ーなるほど。では今回のお話のメインになるSDGsインターンシップもこの団体で開催されている? 牧:「正式に言えば、関西SDGsプラットホームの中でも色んな分科会活動があって、その中でも「教育分科会SDGsナレッジラボ」というSDGs教育を行っている分科会があるんです。そこで毎年「関西SDGsユースアクション」というものを実施しており、「SDGsを知り、学び、考える機会」と「SDGsのアイディアを考え実践する機会」の2軸でSDGsの達成を子どもたちと目指すというものなんです。SDGsインターンシップもその活動の一環になりますね。 ーMASHUさんはどういう経緯があってこの取り組みに参加されたんですか? 中島さん(以下敬称略):「実は牧さんはうちの会長と20年以上の交流がありましてですね…」 牧:「初めて現会長の増成さんと会ったのはMASHUがそんなに会社自体が大きくない時です。当時、僕は障がいのある方の自立支援をやっていて。その時の教え子が筋ジストロフィーだったんですが、本当に何でもできる子だった。それで増成さんに「こんな子おるんやけどな」っていう話をしたら「パソコン出来るんやったらうちで雇いたい」って言ってくれて。重度障がいのある方の就職って難しかったんですが、その流れですぐに雇っていただいたんです」 中島:「ちなみに今もその方に働いてもらっています。もう20年近くになりますかね。ホームページの管理とか在宅で出来るお仕事がメイン業務です。そういった付き合いもあり、こういう取り組みにもお誘いいただいた」 牧:「増成さんって要するに社会性が非常に高い方なんですよね。だからそういうことをいち早く取り入れる。当時は美容業界で障がい者雇用なんてどこもしていませんでしたから。今回の話も「SDGsうちもやりたいねんけどなんかない?」って増成さんが言うから実現したんです。それで2022年度の「関西SDGsユースアクション」でSDGsインターンシップと「マッシュ・おもろ賞」という企業賞でご協力してもらいました」 ー「マッシュ・おもろ賞」を受賞されたのはどんな方々ですか? 中島:「ヤングケアラーについてのアイデアを考えた学生の方でした。そちらもとても素晴しくて」 牧:「ヤングケアラーっていうのは子供たちが子供を要するに兄弟の面倒を見るとか、要は大人たちが本来担うようなことを子供がやっている問題のことですね。子供の時にしかできないことをちゃんとできる環境を作ってあげるようなアイディアを提案したチームだったんですよ」 中島:「僕らも含めて、そういう実態があるということを知らない人が多いと思うんです。今年の5月で引退しましたが、当時の副社長がそのプレゼンテーションにすごく感動してましたね。そういうアイディアに対して素晴らしいなっていうので選ばせていただいたという」 牧:「彼女らはヤングケアラーたちに対しての活動を今しているんです。MASHUさんのおかげでそういう活躍の場が素晴らしい形で広がっていますね」 ーでは、ここで村下さんにお伺いしたいのですが、この活動を知るきっかけになったことを教えて下さい 村下さん(以下敬称略):「知ったきっかけは、MASHUさんのSDGsインターンシップの募集を大学の掲示板で見かけたことです。それで調べて、この関西SDGsユースアクションのことを知りました。元々SDGsに興味があったので、企業さんと解決に向けた取り組みを実際にできるっていうところに惹かれて。それで応募しました。 ーSDGsに興味を持った出来事って何があったんでしょうか? 村下:「特別何か大きなきっかけがあった訳では無いですが、中学生の頃に授業で地球温暖化について勉強して。当時はよく地球温暖化についてのニュースも見かけていたので、余計に危機感を持ったというか。そこからどんどんSDGsというものに興味を持ち始めました」 牧:「まさに今小中高全てにSDGs教育というものをやっているんですよ。これが面白いんです。講義型ではなく問題解決型の授業で、自発的に子どもたちのやる気を引き出していくような教育スタイルが多い。だから子どもたちにとっても経験に残ることが多いんだと思います」 村下:「確かに、今言われてみればSDGsに関連する内容は作文にまとめないといけなかったり、発表する機会も多かったかも。そこで徐々に興味を持っていったのかもしれません」 牧:「子供たちへの教育って本当に大事なんですよ。子供も10年したら大人になる、だから社会も変わるんです。今回のシザーケースだって、いくら環境に良くて社会貢献が出来るって言われていても、これを選択する意識を育てないと買ってくれない訳ですよね。なのでそういう意識を芽生えさせるためにもSDGs教育っていうものが必要になってくるんです」 関西SDGsプラットホームとMASHU、そして「SDGsユースアクション」の活動に参加した学生たち。前半ではそれぞれの関係性とSDGs教育の必要性に迫りました。【中編】では美容室のSDGsの実態やプロダクト制作の背景についてのお話を聞かせていただきます。 <SALON DATA> Lumier de Mashu / リュミエドウマッシュ 大阪市北区中崎西2-4-12 梅田センタービル1F西別館 HP : https://mashu.jp/ Instagram:@mashu_group