わたしの独立物語 【CLENN 弓さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は愛知県名古屋市・鶴舞エリアでオープンして2年目のヘアサロン「CLENN」オーナー、 弓さんの独立ストーリーに迫っていきます。 教えてくれたのは… CLENN オーナー 弓さん 中日美容専門学校卒業後、株式会社サムソン入社。「SUPRAM」のトップスタイリストとしてサロンワークを中心に活躍。36歳で出産、38歳で独立したママ美容師。斬新なファッションやメイクでも注目されている。 Instagram : @clenn_yumi ー 独立を考えたきっかけは? 「初めは『SUPRAM』で働き続けるつもりでした。子どもを産んで、産休から戻ると働き方や給与面が変わるんですね。その時に、ママ美容師の現実はこうなのかと痛感しました。規則だからと受け入れられたけど、何か新しいことがしたかった。けど、面貸しで働くのもほかのサロンに行くのも、なんか違う。ママ美容師の可能性を広げることに挑戦したいと思ったのがきっかけです」 ー 物件はどのように探しましたか? 「複数の不動産にアポを取って、希望条件に合う物件情報を随時送ってもらうようにお願いしました。ギャラリーにもポップアップスペースにもなる場所を作りたくて…。広い物件を探すとなると、希望していたエリアではなかなか見つからず、視野を広げて選択肢を増やしたら、ここが見つかりました」 ー お店づくりでこだわったポイントは? 「いっぱいあります(笑)。一番のこだわりは、お客さま専用の充電器コンセント。美容室に限らず、あると気が利くなって思うんですよ。それで、ひとブースにつき1つ付けました」 ー 確かに、それは便利ですね!空間全体については? 「 『一生通えるサロン、一生働けるサロン』を目指しているので、その想いを体現しています。あえて見えるように配線しているのは、私たちスタッフ全員、心を開いて、取り繕うことなくお客様と向き合いたいから」 ー なるほど、スタッフの皆さんのスタンスが内包されているんですね。ちなみに「CLENN」の名前の意味は? 「縁側の『くれ縁』に由来していて、雨の日も晴れの日も座っているだけで四季を楽しむことができる場所のことを言います。美容室に来てくださるお客様も、座っているだけでワクワクできたらという想いを込めて、『くれ縁』を略してCLENN(クレン)にしました」 ー 実際にオープンしてみて、心境の変化はありますか? 「いまは覚悟が違いますね。今後スタッフが増える予定なんですが、親御さんが頑張って20歳まで育ててくれた子を預かって育てると思うと、責任重大です。仕事も子育ても疎かにしたくないから、お店のこと、スタッフのこと、子どものことを常に考えています。 子どもはわがままで言うことを聞かない(笑)。だからこそ鍛えられたし、将来この子が働く職場としてここ(CLENN)を見たら、考えたら、どうなんだろう?いいサロンかな?って。そういう目線になると、緊張感と隣り合わせ。そういう意味では、親になったタイミングで独立してよかったです」 ー 今後のビジョンを教えてください 「ビジョンとして『一生通えるサロン、一生働けるサロン』を掲げた以上、ここ(CLENN)だけでは難しいと思うんです。若いスタッフが増えてきたら、その子たちがメインのサロンをつくって。ママ美容師が増えたら、お互いが助け合えるママさんサロンをつくりたい。そんな夢はあるけど、お店づくりが先行するのは違う。いま携わってくれているスタッフが幸せであることが大事です。やっていく中で、ママ美容師ならではの価値観が活かされるときがくると思うから、そう信じて続けます」 最後に「デビューも独立も、みんなより遅かったけど、決めたらできます。できました。周りと比べないのが一番」と、弓さん。何事も挑戦することに年齢は関係ないと、教えてもらいました。また、ママ美容師ならではのお話をたくさんありがとうございました!次回の物語をお楽しみに。 <SALON DATA> CLENN/クレン 愛知県名古屋市中区千代田3丁目11−2 シャトー鶴舞 2F Instagram : @clenn.official
わたしの独立物語 【snuw 福山 祥太さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は名古屋・伏見エリアで2023年5月にオープンしたヘアサロン「snuw」の代表、 福山 祥太さんの独立ストーリーに迫っていきます。 教えてくれたのは… snuw 代表 福山 祥太さん 中日美容専門学校卒業後、名古屋の大手美容室に入社。フリーランスへの転身を機にSNS発信に力を入れ始め、半年で1万人のフォロワーを獲得。「snuw」オープン直後「カミカリスマ2023 Greaty∞ カット部門」受賞したほかコンテスト受賞歴多数。 Instagram : @snuw_fukuyama ー いつごろから独立を視野に入れ始めましたか? 「スタイリストになる前は、とにかく早くデビューしたい一心でした。デビューが見えてきたタイミングで、今後どんなスタイリストになりたいかを考えるようになりましたね。もっとこういう空間(サロン)を作りたい、という思いが芽生え始めて退職しました。お店を持つには資金もスタッフも必要。そのために、まずはフリーランスになって独立開業準備をしようと、人生プランを立てました」 ー フリーランスになってから、どんな変化がありましたか? 「時間の制約がない分、作品撮りに注力して、美容師さんに注目してもらえるように、ヘアスタイルのビフォーとアフター、どちらも投稿するようにしていました。それだけでは…と思って、積極的にコンテストにも参加するようにもなりました」 ー コンテストの経験を通して得たことは? 「数ヶ月間、一人のモデルさんと向き合って、本気で悩んで準備します。骨格や顔のパーツなどを見て、黄金比率になるように『似合わせ』を考えたり、その人自身の髪のお悩みやライフスタイルも聞いたりコミュニケーションを取る中で、ふとした表情とか話し方からも汲み取るように意識しています。そういった経験を重ねることで、日々のサロンワークでも幅広い提案ができるようになって、強みになっています」 ー snuw(スニュウ)が大事にしていることは? 「コンセプトは『新しい自分に出会う場所』。おしゃれになりたい、可愛くなりたい、という人は多いですが、どうしたらいいかわからない方も多い。一人ひとりの魅力を最大限に引き出せるように提案します」 ー 内装デザインでこだわったポイントは? 「『DREAM PLUS』でグランプリを受賞して、パリコレのランウェイやバックステージに招待していただいたのが、このサロンがオープンする2ヶ月前くらいのことで。その時に現地で目に入った建物がクリームイエローで可愛かったんです。そこから着想を得て、素材は洞窟っぽい質感に。曲線を多く取り入れることで“女性らしさ”を感じるテイストにしました」 ー 実際にオープンしてみてどうですか? 「スタッフのみんなと高め合えて、日々わくわくしています。朝礼の時間に共有する僕のノウハウをそれぞれが自分なりに落とし込んで、お客様に提案している姿。そして、その仕上がりを見てお客様が喜ぶ姿。数字でいうとお客様の人数。どれもみんなの成長ですし、それが僕のやりがいになっています」 ー 今後のビジョンを教えてください 「僕が先陣を切って、背中を見せることでチームを鼓舞していくという1年でしたが、2年目はいままで以上にみんなと一緒にサロンを作っていきたいです。スタッフのやりたいことをなるべく叶えてあげたい。僕からはそれぞれのいいところを見つけて、伸ばしていけるように伝えていけたらなと思っています」 会社員からフリーランス、そして独立。これまでにさまざまな働き方をご経験された福山さんは、志が高く、行動力のある人です。努力の積み重ねが大事だと、教わりました。また次回の物語をお楽しみに。 <SALON DATA> snuw/スニュウ 名古屋市中区栄1-6-1 C-ForestⅦ 2A Instagram : @snuw.hairsalon
「“大人男子のサードプレイス”『owl心斎橋店 produced by brace』とは【後編】
「soin de brace(ソワンドゥ・ブレス)」など、関西圏にヘアサロンを展開する株式会社ハーベンから、初のメンズサロン「owl(アウル)心斎橋店 produced by brace」が2023年6月にオープンしました。ここでは、スタイリストだけでなくブランドのプロデュースも手掛ける店長の辰井翼さんに、サロンに関するお話をたっぷり伺いました。 →前編はこちら 技術以上に接客を重要視 ―サロンとして最も誇れる技術を教えてください。 辰井:やはり、サロンの売りにもしているパーマですね。エリア的にも学生をメインターゲットとしているサロンが多い中、私たちは20代後半から30代前半の大人男性に振り切っているからこそ、頭皮に優しくて色気のあるハイクオリティなパーマをご提案しています。髪の毛をかき上げられるぐらいのレングスのほうが大人の色気を演出できてオススメです。 ―辰井さんご自身が誇れるものはありますか? 辰井:「ソワンドゥ・ブレス」時代から得意にしていたのは、襟足が長いスタイルのウルフカット。特に、ウルフカットの襟足にゴールドのインナーカラーを差し込んだスタイルを一時期心斎橋エリアでよく見かけましたが、そのスタイルを流行らせたのはおそらく自分だという自負があります。もっとも、デザインソースは私がかっこいいと思っている東京の美容師さんなんですけどね(笑)。 ―サロン内で大切していることとは? 辰井:誰でもSNSで知識や技術を手軽にインプットできる今、美容師に求められるのは接客力です。お客様の理想を引き出すカウンセリング力、理想に近づける提案力や対応力、完成したスタイルの再現性、ご来店のサイクル……。私たちがお客様一人ひとりの1年間のヘアスタイルプランをプロデュースできるぐらいにならないと、お客様にご満足いただけない状況になっていると思っています。その意味でも、私は技術よりも接客のほうに重要性を感じています。 ―スタッフの方にはどのような教育をされているのですか? 辰井:ずっと言い続けているのは、「自分に矢印を向けること」。技術的なミス、お客様からのクレーム、スタッフ間でのコミュニケーションエラーなどは業務で起こり得ることですが、自分に矢印を向けないとただの失敗で終わってしまいます。そうではなく、失敗を経験に変えてほしい。「こういう失敗があったから」ではなく「こういう経験があったから」と先につなげていくことが大切です。技術的な教育というよりは、仕事に対する姿勢や向き合い方を伝えることがほとんどですね。 ―スタッフ一人ひとりが自分事として捉えると。 辰井:お客様にとってのこのサロンは「サードプレイス」ですが、スタッフにとってのここは「セカンドプレイス」です。「アウル」というこの職場を誇れる環境にするためには、すべて自分たちで築いていく必要があります。スタッフ一人ひとりがサロンを動かしているという感覚を持ち、取り組んでほしいと思います。自分に矢印を向けることで、美容師として人として成長し、お客様から信頼を得られる存在になり、「アウル」が誇れる店になる。それが、「セカンドプレイス」の完成形だと思います。 関西圏でさらなる勢力拡大を視野に ―今後、サロンとしてチャレンジしてみたいことはありますか? 辰井:大人男性のメンズサロンとして地域で、関西で一番まで引き上げたいという想いはありますが、そのためにはまず、同じ目標や考えを持つスタッフを増やしていく必要があります。私の目標では2年間隔で1店舗ずつ増やし、35歳までに5店舗を展開するプランを立てています。 ―出店するエリアの目星も立っているのでしょうか? 辰井:今考えているのは、大阪では梅田と天王寺です。梅田には大人男性のカラーをメインとしたサロンを構想に入れています。というのも、メンズカラーの専門店は大阪ではそれほど多くないので、カラーに特化したメンズサロンを展開したいなと。天王寺はまだメンズサロンが浸透し切っていない大きな街なので、参入していきたいと考えています。大阪に3店舗開業した後は、「ソワンドゥ・ブレス」時代に長く勤めていた奈良と、地元の神戸にも1店舗ずつ出店したいですね。 ―どれも比較的大きな街ですね。 辰井:「大人男子のサードプレイス」という第3の場所は、できるだけ都会に出店したいと考えています。都会に出店すれば、競合するサロンが増えてテナント代も上がり、経営は難しくなります。ただ生半可なことを言うようですが、利益よりもブランドを大切にしたい。都会で成功すればブランド力は高まりますし、ブランドのコンセプトに合ったサロンを築くほうが自分たちの第2の場所として居心地が良く、幸せなんです。ただ、心斎橋店ほど広いサロンを設けることは、今のところ考えていません。 ―その理由とは? 辰井:今の心斎橋店はゆったりとした店内で、立地も満足しているのですが、きめ細やかなサービスと落ち着いた空間を考えれば、店舗面積はもう少し狭いほうがベターだとも思います。心斎橋店の席数は5席ですが、理想は3席。今後は3席か5席のサロンをベースに展開していきたいですね。 ―最後に、大阪エリア、関西エリアで「アウル」はどのような存在でありたいですか? 辰井:「アウル」を冠したお店は数多くありますが、その中でも「大阪の『アウル』と言えばメンズサロンだよね」と言っていただけるような存在になりたいですね。私自身、「アウル」の経営者というよりもブランドプロデューサーとしての気持ちのほうが強いと思います。「アウル=大人男性のサロン」というイメージが定着するよう、これからもブレずに突き進んでいきたいと思います。 <SALON INFO> owl心斎橋店 produced by brace/アウルしんさいばしてん プロデュースド バイ ブレス 大阪市中央区西心斎橋2-18-6 アベニュー心斎橋203号 Instagram :@owl_shinsaibashi
「“大人男子のサードプレイス”『owl心斎橋店 produced by brace』とは【前編】
「soin de brace(ソワンドゥ・ブレス)」など、関西圏にヘアサロンを展開する株式会社ハーベンから、初のメンズサロン「owl(アウル)心斎橋店 produced by brace」が2023年6月にオープンしました。ここでは、スタイリストだけでなくブランドのプロデュースも手掛ける店長の辰井翼さんに、サロンに関するお話をたっぷり伺いました。 仲間にも支えられて初のメンズサロンを実現 ―まず、店名にある「produced by brace」とは? 辰井:私たちが在籍する株式会社ハーベンの中で最も大きなサロングループが、「soin de brace(ソワンドゥ・ブレス)」になります。ハーベンが間もなく100周年を迎えることもあって、「ブレス」から初めてのメンズサロンを展開するという話に。メンズブランドの代表という名誉なポジションを預かり、「owl(アウル)」というブランド名まで命名させていただきました。名付ける際、運営元の「ブレス」から派生したブランドであることを発信するために、「produced by brace」を付けさせていただきました。 ―このサロンをオープンするまでの経緯は? 辰井:話はさかのぼりますが、私がハーベンに入社したのが今から約9年前。最初に配属されたのは、「ソワンドゥ・ブレス」の奈良店でした。当時の会社は女性にターゲットを絞った教育に力を入れていましたが、私はもともと「かっこいいスタイル」が好きで、自己集客のターゲットを男性に絞って営業していました。すると予想以上にニーズがあり、気が付けば一人勝ちしている状態に。次に配属された奈良県のあやめ池店でも同じような成果が得られたんです。 ―メンズ専門のサロンで勝負できる、と。 辰井:ある程度の確信はありました。あとは、仲間との出会いも大きかったですね。美容学生の就職活動や研修などを受け入れることも多い大型サロンの心斎橋店で勤務していた時のこと。ある時、メンズのスタイリングに特化していた私に興味を持って見学に来てくれた美容学生さんがいて、メンズスタイルの話などで盛り上がり、最終的にはハーベンに入社する流れに。最初は私と違う店舗に勤務していましたが、今では「アウル」のスタッフの一人として活躍してくれています。また、奈良店で一緒に働いていた後輩からも「僕もメンズに特化したいです」と想いをぶつけられました。メンズサロンの構想は決して独りよがりの考えではありません。一緒にやりたいと言ってくれる仲間たちが現れ、それに突き動かされたことで、「アウル」の立ち上げに至ったんです。 ワンランク上の大人男性に導く場所 ―サロンのコンセプトを教えてください。 辰井:「オトナ男子のサードプレイス」です。私はブランド名を考えるよりも先にコンセプトを決め、コンセプトに合ったブランド名や空間を考えていきました。大人男性の第3の場所を作りたいと思った理由としては、男性は基本的にバーバーや理髪店に行くことのほうが多いと思いますが、男性のための美容室が増えてきているという事実はまだそれほど認知されているわけではありません。そんな状況の中で、ターゲットは美容に興味・関心を強く持ち始めた世代。このような世代の方々を「アウル」というブランドでプロデュースし、ワンランク上の大人男性に導く場所にしたい、というのが私たちの想いです。 ―コンセプトから決めていったのですね。 辰井:やはり、店舗ごとでコンセプトがしっかり定まっていないと進むべき方向を見失い、スタッフ全員の足並みがそろわないですからね。立場的にも自分のポジションが上がれば上がるほど、後輩たちを同じ方向に導く舵取りが難しくなります。スタッフそれぞれの人生と言えばそれまでですが、せっかく一緒に仕事をしているわけですから、みんなで同じ方向に歩んで良い成果を得たい。大切なスタッフを路頭に迷わせるわけにはいきませんからね。その意味でも、コンセプト設定は本当に大事だと思います。 ―サロンの立地を心斎橋、アメリカ村の三角公園前に決めた理由とは? 辰井:求めている人しか訪れない運が舞い込んできた、という感じでした(笑)。物件を探していた2022年末のタイミングで、この物件が空きになるという連絡が入ってきて、これは運命だなと。契約する前にこの界隈のペルソナを考えた時、心斎橋や南船場、南堀江に勤務・在住の男性像をイメージしました。彼らが若者の集まる三角公園に来るのかと考えれば、おそらく来ないだろう、と。そこで、コンセプトとペルソナをつなぎ合わせるために後付けをしたんです。男性はどんなに早くても髪を切るペースは月1回。その月に1回、普段とは違う空気感を味わえる立地で、来店すればブラックを基調とした空間の中でサードプレイス感が味わえる、と。これが意外としっくりくると思ったので、この物件に決めました。 ―内装のこだわりはありますか? 辰井:「オトナ男子のサードプレイス」のコンセプトを体現するため、ブラック一色という非日常的で、ゆったり落ち着いた空間作りにはこだわりました。今後、スタッフやお客様の数が増えていったとしても、席数を増やすことは後からでも可能ですからね。あと、ご来店いただいたお客様がノスタルジーに浸っていただけるJ-POPやアニメソングをBGMで流しているのもポイントですかね(笑)。 ―BGMが邦楽とは珍しいですね。 辰井:お客様は20代後半から30代前半がコアターゲットになるので、その世代の方々が子どもの頃によく聞いていた曲、お父さんの車から流れていたような曲をBGMで流しています。こうしたサービスもメンズサロンならではだと思います。かっこよくなっていただくだけでなく、「寛ぎたい」「気分を上げたい」といった感覚的な付加価値にも働きかけたいと思っています。 後編に続きます。 <SALON INFO> owl心斎橋店 produced by brace/アウルしんさいばしてん プロデュースド バイ ブレス 大阪市中央区西心斎橋2-18-6 アベニュー心斎橋203号 Instagram :@owl_shinsaibashi
憧れの独立・開業 リアル・ストーリー 【第4回】開業届とは?
独立して自分の店を持ちたい! そんな美容師さんのために、独立・開業に向けた心がまえや具体的な手続きを徹底解説。第4回は、美容室のように個人で商売を始める時に提出する「開業届」についてご紹介します! 開業届は税務署に提出する書類 開業届(正式な名前は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます)は、個人でお店などの商売を始める時に、税務署に提出する書類です。 提出しなくても罪にはなりませんが、提出することでいろいろなメリットがあります。詳しくは後ほど説明しますね。 提出期限は、開業した日から1か月以内。提出先は管轄の税務署ですが、今はe-Taxを使ってオンラインで提出できるほか、スマホで提出できるクラウドサービスもあります。 開業届を提出するメリット 出さなくても特に問題のない書類ですが、提出しておけば以下のようなメリットがあります。 ●最大65万円の所得控除 開業届を出す最大のメリットは、確定申告の時に「青色申告」ができる点です。複式簿記が必要になるなど少々難しいのですが、所得税や住民税の対象となる課税所得から最大65万円を引くことができ、大きな節税効果があります。 このメリットを受けるためには、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。こちらは開業日から2か月以内が期限ですが、ややこしいので開業届とセットで出すと覚えておくのが良いでしょう。 ●屋号名義の銀行口座 開業届を出しておけば、屋号(店名)の名義で銀行口座を開設することができ、振込や支払いの際に信用されやすくなるなど何かと便利です。 ●赤字の3年繰越 例えば1年目と2年目がそれぞれ100万円ずつの赤字で、3年目に200万円の黒字が出たとします。この場合、最初から青色申告をしていれば、3年目の黒字を最初の2年間の赤字と相殺することができ、課税対象となる所得は実質ゼロとなるので、大きな節税効果が生まれます。 その他にも、家族への給与を経費とみなすことができたり、小規模企業の共済に入れるなど、いくつかのメリットがあります。 国税庁のホームページなども参照し、開業前に準備をしておきましょう。
わたしの独立物語 【RUKA hair make 前川 明日香さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は6年前に大阪・四ツ橋で「RUKA hair make」をオープンさせた、前川 明日香さんの独立ストーリーに迫っていきます。 ▼今回教えてくれたのは… RUKA hair make オーナー 前川 明日香さん 美容師歴19年目。大型サロンをはじめとする3店舗で美容師としての経験を重ねる。2018年に大阪・四ツ橋に「RUKA hair make 」をオープン。その人らしさはもちろん、ゲストの「その時々の気分」を汲み取ることを大切にしている。 Instagram : @maekawa__asuka ー 独立をしようと思ったきっかけは? 「前のサロンでは10年勤めていたんですが、店舗責任者という立場だったのでスタッフ教育とか任されるんですね。そうすると若い子たちがどんどん入ってきて、そしてその子たちもスタイリストになっていく。それに伴って客層も変わっていくんですよ。当時30歳だったんですが、20代前半の子が連れてくるお客様と自分のお客様が同じ空間にいることに少し違和感を感じてしまったことがあったんです。それが最初のきっかけでした。あとは、自分が独立をすることでジュニアスタイリストの子たちが更に成長をするきっかけになれば良いなと思ったので、最初は前のサロンのフランチャイズという形でお店をオープンさせました」 ー フランチャイズという形をとった理由は? 「長く働いた分、愛着もあったということと、スタッフの教育を任されている立場だったということもあって。私がまだ出来る事が残っているかもしれないし…このサロンは出るけど、いつでも相談しにきていいよみたいな感じにしたくて。そういう風に繋がっている方が良いのかなと思ったんです。なので最初の数年間はフランチャイズにして、後々完全独立するっていう形にしました」 ー 独立を決めてからオープンまで、準備期間はどれくらい? 「30歳の時にオーナーには32歳でフランチャイズで独立したいってことを伝えていました。最初の1年間は前のサロンの引き継ぎとか店舗体系を整えていきつつ、残りの1年間で自分のサロンの準備をしていったって感じですかね。店舗探しから施工まではサロンワークと並行して進めていて、オープンする1週間前まで前のサロンで働いていました(笑)。ここは元々居抜き物件だったということもあり、施工は1ヶ月くらいだったと思います」 ー 元々お店のイメージとかはあったんですか? 「そんなに派手にはしたくなくて、ナチュラルにしたというくらいですかね。あとは入口とかに植物を増やすっていうのは決まってたんです。それと小さい観葉植物とかも増えていくんだろうなっていうのは思っていて。商品やお花とか植物が増えても気持ち良く並ぶように、シンプルに抑えつつも全体の店舗のトーンや色味は統一してもらいました」 ー RUKAというサロンで大切にしていることは? 「自然体でいられること。なのでサロンの名前も光や水といった自然の要素の意味合いを持つ言葉を組み合わせて考えました。例えば40歳だからブリーチは年相応じゃないとか、何歳になったからこうしないといけないという考え方が結構苦手で。自分がテンション上がるならいいやんっていう思いが純粋にあったんですけど。でもどうしても気になる方は気にしちゃうと思うんですよね。だからこのRUKAに通われる方は、自分がいいと思うスタイルをしてもらいたし、それが手助けできるサロンであれたらいいなっていう思いでやっています」 ー 1日何人くらいのお客さんを対応していますか? 「今は完全に一人でしているので、ベースは5人ですね。それぞれキャパがあると思うんですけど、私は最初から最後まで同じテンションと空気感が一定でいける限度が5人ということがこの6年でわかりました(笑)。最初はアシスタントもいたので、5人以上でも問題は無かったのですが、完全に独立してから同じテンションでやっているとめちゃくちゃ疲れるんですよ。施術はもちろん何年もやってるから漏れがあるわけではないけれど、朝一番のお客様と一番最後のお客様に同じ金額を払っていただくのに自分の体力の関係で接客が変わるのが良くないなと思って。やっぱり疲れているのがわかるような接客をされるとお客様も心地よくないし、自分もやっていて楽しくないですし。そういう意味で基本的には1日5人という形を取っています」 ーサロンの話から少し逸れるのですが、前川さんは「香り」のブランドもされていますよね。そもそも始めたきっかけというのは? 「最初はRUKAのオープンに合わせて、調香師さんにお願いしてオリジナルの香りを調合したミストを販売していたんです。元々私が髪を切る時に「色香」っていう言葉を大切にしていて。その人のムードとか香りってなんとなく覚えているじゃないですか。この人っぽい!みたいな。それで私も髪型を作った時に、RUKAっぽいスタイルっていうものが出来ると思うんですが、そこに香りが足されると更にムードが出て良いんじゃないかと思って香りを作り始めたところからですね」 ー 美容室のオリジナルアイテムではなくブランドとして確立させた理由は? 「サロンを作るときも今もずっと思っていることなんですが、出来るだけ固定概念って無い方がいいなって思うんです。美容室だからこれを販売しているっていうのが無い方が自分の中ではやりやすいと感じたんです。もちろんそれが売りになることだってあるじゃないですか。このサロンが取り扱っているなら、安心して買えるみたいな。でもサロンは関係なく、良い物は良いし逆に美容室っていう枠があることで色々囚われてしまうように感じてしまって。そういう枠を飛び出して自由にいろんな人に広まって欲しいと思ったので、いっそのこと香りに関しては美容室と切り離して「Fyeeka(フィーカ)」というブランドにしました。今はオリジナルのエッセンシャルオイルを3種類と髪に直接つけられるバームを2種類、それとお香などをセレクトして販売しています」 ー 最後に今後のビジョンを教えてください 「ここでお花屋さんとかお菓子屋さんを呼んできて、美容室とは関係なくポップアップとかワークショップのイベントを不定期に開催しているんです。っていうのも美容室に通われる方って髪を切りに行くという共通の目的があるじゃないですか、自分自身が綺麗になるという。でもそういう場所でイベントをするとそこがちょっと崩れる。そうする事で元々出会うはずだったかもしれないけど、今まで出会ってこなかった人たちがサロンに集まったりする。逆にインスタを見ていて、別に髪を切る用事はないけどサロンは気になるみたいな人も気兼ねなく来れるんですよね。そういう出会いを提供できる場作りはこれからもしていきたいと思っています。でも全く一緒の人を集めたいわけじゃなくて、今までの概念を崩してくれる人との出会いがあれば更に良いですね。そうなるともっと楽しいんじゃないかな。元々このサロンの空気感が好きで通ってくれている人たちなら尚更、この世界観での新たな出会いを通して違うことにチャレンジしてみようかなって思うきっかけになって欲しいですね。例えば髪型も50歳過ぎてからでも金髪にしても良いんだ! みたいな、そういうきっかけを楽しんでもらえる場を提供し続けたいです」 独立しようと思ったきっかけから、サロンでの大切にしていること、そして香りのブランドに今後のこと。全てが「自然体であること」「枠にとらわれないこと」という軸を持ってチャレンジしている姿勢がとても素敵でした。貴重なお話を聞かせていただいた前川さん、ありがとうございました!また次回の物語をお楽しみに。 <SALON DATA> RUKA hair make/ルカ ヘアメイク 大阪市西区新町1-8-10 HP : https://www.rukahairmake.com/ Instagram : @rukahairmake
憧れの独立・開業 リアル・ストーリー 【第3回】美容室とインボイス制度
独立して自分の店を持ちたい! そんな美容師さんのために、独立・開業に向けた心がまえや具体的な手続きを徹底解説。第3回は美容室の経営とインボイス制度の関係をご紹介します。 ------------------ インボイス制度について 最近、「インボイス制度」という言葉があちこちから聞こえてきますね。これは消費税に関する新たな制度で、2023年10月から適用が始まります。まずは簡単に制度の紹介をします。 お店や会社を経営していると、お客さんからお金をもらったり、仕入先や外注にお金を払ったりします。その際、消費税も受け取ったり払ったりしますよね。この消費税は、当然ながら税務署に納める必要があります。 納める消費税の額は、自分たちが受け取った消費税から、支払った消費税を差し引いた額になります。この、支払った分を“差し引く”ことを「仕入税額控除」と呼びます。 また、これまで年間の売上が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」として消費税を納める必要がありませんでした。しかし、10月以降は、この「免税事業者」のままの仕入先からの請求書では、仕入税額控除を受けられなくなります。控除を受けられるのは、課税事業者として国税庁に登録した仕入先(=適格請求書発行事業者)からの請求書のみとなります。 これが大まかなインボイス制度の概要ですが、詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。 では具体的に、美容室の経営にどのような影響があるのか見ていきましょう。 仕入先は課税事業者? 美容室を経営していると、ヘアケア製品やさまざまな資器材を仕入れると思います。また、宣伝のためのツール制作を依頼することもあるでしょう。 それらの発注先が免税事業者の場合、そこに支払った消費税を差し引くことができず、結果的に納める消費税額が多くなってしまいます。発注先を選定する際に、念のため確認した方がよいでしょう。 美容師を業務委託する場合 お店を大きくしたい場合、自分以外にも美容師を雇うことになると思います。従業員として雇用する場合は特に関係ありませんが、業務委託する場合にはインボイス制度の影響が出てくる可能性があります。 委託する美容師が免税事業者の場合は仕入税額控除が受けられなくなりますので、適格請求書発行事業者になってもらうよう交渉が必要になるかもしれません。 いずれもお店の規模や経営方針によって対応は変わってくると思います。また、急激な負担の増加を防ぐための経過措置も用意されていますので、詳しく調べてみましょう。
わたしの独立物語 【YAYKA 森川 智さんの場合】
憧れの独立、開業。ヘアサロンの数だけ、その裏側には様々なストーリーが秘められているもの。 今回は京都の四条烏丸エリアで2022年4月にオープンしたヘアサロン「YAYKA」の代表、 森川 智さんの独立ストーリーに迫っていきます。 教えてくれたのは… YAYKA 代表 森川 智さん 京都の老舗デザイナーズサロンYAYOI〜BRAINSから独立し、2022年4月に「YAYKA」をオープン。個性を引き立たせるデザインを軸に、京都の街で新しいブランディングを目指して奮闘中。 Instagram : @morikawa3104 ー 独立を考えたきっかけは? 「実は独立願望って元々は無かったんです。前のサロンでは18年間在籍していたんですが、アシスタントからスタイリストを経て色々と経験を積んでいく中で、目標が出てきてはクリアしていくということを繰り返してきたんですよね。でも長く働いていると、この環境で自分がもっと成長することって出来るんかな?ってふと考えたことがあって。その時に先が見えなくなってしまったので独立を決意しました。やっぱり自分が成長をしていくためには、環境を変えた方がいいなって思った部分が大きかったので」 ー 独立を決意をしてからオープンまでどれくらいかかった? 「辞めようと思ったのは、15年目くらいの時。当時はクリエイティブディレクターという現場ではトップのポジションで働いていました。辞めるという話になった時、僕も長い間そのサロンで働いていたということもあって、会社としても最初は残って欲しいと言われて…。話し合いを重ねて、最終的には独立という形になりました。なので結局3年位はかかったと思います」 ー サロンの「YAYKA」(ヤイカ)にした意味は? 「これは造語なんですが、まず「 YAY(ヤイ)」っていうのが英語のスラングで。意味としては、嬉しさや喜びとか、達成感を感じたときに使われるんですね。それと日本語で「八重日(やえか)」という言葉があって。これは日々を重ね続けていくっていう意味があるんです。この二つの意味を掛け合わせて、嬉しさや喜びを重ね続けられるサロンでありたいという意味を込めてこの名前をつけました」 ー 素敵な言葉ですね。サロンの内装はどういうイメージで作られましたか? 「シンプルかつスタイリッシュな中にも、温かみを感じられるようなイメージで…。冷たさと温かさのバランス感は意識しました。オシャレでシュッとしすぎていたらちょっと落ち着かないじゃないですか。美容室って服屋さんとは違って、1回来たら1時間〜2時間は滞在してもらわないといけない。それでもアットホームにはなり過ぎないようにしながら、居心地が良いと思ってもらえる空間作りを意識しました」 ー サロンの内装で特にこだわった場所は? 「壁なんですけど、クロスとかじゃなくてこれ全部手で塗ってもらったんです。人の手の温度感が伝わるような空間にしたかったので。あとはカウンターが1枚板で繋がっているところ。最近はコロナ禍ってこともあって、1席1席区切ったサロンも増えたと思うんですよ。でも美容室の醍醐味って、同じ空間に色んな人がお客様にいて、横の会話が聞こえたり、僕ら美容師を通して会話が生まれたりとか…そういう横同士で繋がっていく楽しさもあると思うんです。一人ひとりがこのサロンに足を運んで、この場所に座っている。そういうお客様で繋がっているということを表現したくて繋げました」 ー 少し踏み込んだ質問になりますが、独立資金はどう工面されましたか? 「正直あんまり貯金とかしたことがなくて。元々独立願望も無かったのでその為に貯金をしたわけでは無いですね。ただ、勝手に貯まっていました(笑)。頑張ったら頑張っただけ給与が上がっていくので、そういう形で見知らぬうちに貯まっていたといいますか。まあ、18年間もいたのでね(笑)。でもその貯まっていたお金だけで開業した訳ではなくて…。それだとかなり貯めていないと難しいと思います。借りたい金額の2〜3割程度手元に自己資金として用意しておくことが大切かなと。貯金ゼロの人にいきなり1000万円を貸すっていうのはリスクじゃないですか。なので貯金があればあるほど貸してくれる幅が広がるって感じですよね」 ー オープンしてから実際どう感じていますか?大変?? 「そうですね…。やっぱやる事は多いなって思いますが、純粋に楽しいですね。雇われていると当然会社の方針もあるし色々と事情を合わせながらやっていかないといけなかったんですが、自分がやりたいって思ったことをダイレクトにアクションを起こせるっていうのはやりがいがあるなって感じます。もちろん責任は伴いますが…。大変だと感じることはサロンワーク以外の業務。今までは知らないことだらけだったので、独立してから知ることも多かったです。税の計算とか経理的なことは苦手ですが、社会勉強だと思ってやっています」 ー 今後のビジョンを教えてください 「僕が一番やりたいことは美容師を育てることなんです。なので、これからスタッフも増やしていって良い美容師に育って次の店舗を建てれたらなって思っています。今は僕とアシスタントの2人なんですが、10月から1人新しくスタッフも増えて、来年の春には新卒で入社してくれる子も決まっているんです。なので2年後を目標にまたこのエリアで、サロンのコンセプトを変えて違う雰囲気のお店を出店できたらなと思いますね」 自分軸でのビジョンではなく、良い美容師を育てたいという今後を描いている姿勢がとても印象的でした。京都の街に素敵なサロンが展開されていく将来が今からとても楽しみです。お話を聞かせてくれた森川さん、貴重なお話をありがとうございました! また次回のお話をお楽しみに。 <SALON DATA> YAYKA /ヤイカ 京都市中京区六角通大黒町76-2 Instagram : @yayka_kyoto
大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃④
スタイリスト歴16年の美容師と元ウェディングプランナーの的場さんご夫妻が営む『DOUBLE M』は、2023年2月に大阪・北加賀屋にオープンしたばかりの新サロン。サロンの特徴、開業準備、役割分担、今後の目標など、お二人のリアルなエピソードを全4回にわたってお届けします。 →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃①はこちら →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃②はこちら →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃③はこちら 左:オーナー/スタイリスト 的場 千敏さん 石川県出身。22年間勤めた大正区のサロンから独立。きめ細やかで丁寧なカウンセリング・スタイリングで、お客様一人ひとりの理想を叶える。 右:アシスタント/エステティシャン 的場 麻美さん 大阪府出身。受付や経理、着付けなどヘアスタイリング以外の部分で千敏さんをサポート。その傍ら、店内の一角でエステサロンも営む。 いつかサロンとともにカフェの経営も実現したい ―例えばSNSなど、サロンを周知してもらうための取り組みは? 千敏:本来であればInstagramでも定期的に発信してフォロワーを増やしていきたいところですが、今はスタイリストが私一人だけなので、正直なところセーブしている部分もあります。まずはサロンに来てくださったお客様一人ひとりを丁寧にカウンセリング・スタイリングすることで、信頼をコツコツと積み上げていくことが先決だと思っています。 麻美:それに、知らないお客様同士がこの狭い空間にいるのは、きっと気を遣うはず(笑)。ゆったり寛げる空間を提供し、ファミリーで来ていただけるサロンのコンセプトに反してしまいますからね。その分、お客様の予約が時間帯によってぽっかり空かないように気を付けています。 ―今後、チャレンジしてみたいことはありますか? 千敏:今のやり方がしっくりきているので、当面は維持していこうかと思っています。ただ、私も妻もカフェ巡りが好きなので、いつかサロンに併設する形でカフェも経営できれば最高ですね。店頭の木製の格子窓からコーヒーを手渡したいなとシミュレーションしています(笑)。ここを地域の憩いの場にすることが今の夢ですね。 麻美:私は何より、美容師免許を取得することが先決です。あとは着付けやエステを身に着けたので、次はまつ毛・眉毛にもトライしてみたいですね。夫がヘア、私がその他の美容を担当できれば、このサロンの可能性はまだまだ広がると思います。 千敏:つまり、このサロンの伸びしろですね(笑)。キーパーソンは妻で間違いないです。 夫婦二人三脚でサロンのオープンに至った的場さんご夫妻。「お客様一人ひとりを大切にする」という強い想いのもと、コンパクトな店舗でプライベート空間を演出し、それぞれの個性を合わせたお二人ならではのサロンワークが印象的でした。ご夫婦でのサロン経営、地域密着型のサロン経営を考える際の参考にしてみてはいかがですか? <SALON DATA> DOUBLE M(ダブルエム) 大阪市住之江区北加賀屋5-6-18 リアライズ北加賀屋T02 Instagram :@double_m_hair
大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃③
スタイリスト歴16年の美容師と元ウェディングプランナーの的場さんご夫妻が営む『DOUBLE M』は、2023年2月に大阪・北加賀屋にオープンしたばかりの新サロン。サロンの特徴、開業準備、役割分担、今後の目標など、お二人のリアルなエピソードを全4回にわたってお届けします。 →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃①はこちら →大阪・北加賀屋の新サロン『DOUBLE M』の的場ご夫妻を直撃②はこちら 左:オーナー/スタイリスト 的場 千敏さん 石川県出身。22年間勤めた大正区のサロンから独立。きめ細やかで丁寧なカウンセリング・スタイリングで、お客様一人ひとりの理想を叶える。 右:アシスタント/エステティシャン 的場 麻美さん 大阪府出身。受付や経理、着付けなどヘアスタイリング以外の部分で千敏さんをサポート。その傍ら、店内の一角でエステサロンも営む。 私のできることが増えればこのサロンの可能性はさらに広がる ―千敏さんはスタイリストですが、麻美さんはどのような役割を? 麻美:私は出産するまでブライダルの仕事に携わっていて、そもそも美容師免許は持っていないので、受付や掃除、経理、それから着付けを担当しています。着付けはブライダルの専門学校時代に資格を取っていて、サロンの開業を考え始めた頃から着付け教室で習い直しました。あとは、産後にエステを学んだこともあって、店内の一角のスペースでエステサロンも営んでいます。 ―店内にエステサロンがあると? 麻美:そうなんです。「REVI」を導入するために研修し、加盟店になりました。店内の奥には半個室のエステルームを設けています。それもあって、ヘアサロンのスペースがさらに狭くなったんですけど(笑)。 ―今後、美容師免許を取得する予定は? 麻美:実は今、通信教育で美容師免許の取得に向けて勉強している最中なんです。ヘアサロンで働く以上は仕事上の不便も多いですし、やっぱり免許は必要だなと。私のできることが増えれば夫の負担も減り、このサロンに新しい可能性が広がるということですからね。 夫婦で円満に仕事ができる秘訣は仕事上の関係性を崩さないこと ―仕事上で千敏さんにアドバイスをすることはありますか? 麻美:私はできることが少ないので、技術面での口出しは一切しません。もちろん、スタッフは二人しかいませんから、より効率良く回るような提案はしますが、その場合も「こうしたほうがいいよね」という言い方ではなく「こうするのはどうかな?」と、お伺いを立てるスタンスです。夫婦とは言っても公私混同しすぎないよう、仕事上の関係性を崩さないことが、円満に仕事ができる秘訣だと思います。家では立場が逆転しますけど(笑)。 ―ちなみに、平日の子育てはどのようにしているのですか? 麻美:平日は10時オープンなので、小学生の長女と保育園児の次女を送り届けてから出勤。17時で業務を終えたあとは次女を迎えに行き、それから小学生の長女を自宅の近くにある私の実家に迎えに行きます。17時以降は夫一人にお店を任せる形になりますね。 ―夫婦で働くことのメリットとは? 麻美:夫ということもあってコミュニケーションがスムーズで、個人的にはのびのび仕事ができていますね。 千敏:スタッフが多いサロンだと、一人ひとりの目標がそれぞれ違うことも多く、同じゴールに向かってお店を経営するのがすごく大変です。その点、妻とはサロンとしての目標設定がしやすい。やっぱり同じ歩幅で、同じ目標に向かって歩んでいけるところは大きなメリットだと思います。 次回最終回は、サロンとしてのチャレンジ、今後の目標をお届けします! <SALON DATA> DOUBLE M(ダブルエム) 大阪市住之江区北加賀屋5-6-18 リアライズ北加賀屋T02 Instagram :@double_m_hair