「“大人男子のサードプレイス”『owl心斎橋店 produced by brace』とは【後編】
「soin de brace(ソワンドゥ・ブレス)」など、関西圏にヘアサロンを展開する株式会社ハーベンから、初のメンズサロン「owl(アウル)心斎橋店 produced by brace」が2023年6月にオープンしました。ここでは、スタイリストだけでなくブランドのプロデュースも手掛ける店長の辰井翼さんに、サロンに関するお話をたっぷり伺いました。 →前編はこちら 技術以上に接客を重要視 ―サロンとして最も誇れる技術を教えてください。 辰井:やはり、サロンの売りにもしているパーマですね。エリア的にも学生をメインターゲットとしているサロンが多い中、私たちは20代後半から30代前半の大人男性に振り切っているからこそ、頭皮に優しくて色気のあるハイクオリティなパーマをご提案しています。髪の毛をかき上げられるぐらいのレングスのほうが大人の色気を演出できてオススメです。 ―辰井さんご自身が誇れるものはありますか? 辰井:「ソワンドゥ・ブレス」時代から得意にしていたのは、襟足が長いスタイルのウルフカット。特に、ウルフカットの襟足にゴールドのインナーカラーを差し込んだスタイルを一時期心斎橋エリアでよく見かけましたが、そのスタイルを流行らせたのはおそらく自分だという自負があります。もっとも、デザインソースは私がかっこいいと思っている東京の美容師さんなんですけどね(笑)。 ―サロン内で大切していることとは? 辰井:誰でもSNSで知識や技術を手軽にインプットできる今、美容師に求められるのは接客力です。お客様の理想を引き出すカウンセリング力、理想に近づける提案力や対応力、完成したスタイルの再現性、ご来店のサイクル……。私たちがお客様一人ひとりの1年間のヘアスタイルプランをプロデュースできるぐらいにならないと、お客様にご満足いただけない状況になっていると思っています。その意味でも、私は技術よりも接客のほうに重要性を感じています。 ―スタッフの方にはどのような教育をされているのですか? 辰井:ずっと言い続けているのは、「自分に矢印を向けること」。技術的なミス、お客様からのクレーム、スタッフ間でのコミュニケーションエラーなどは業務で起こり得ることですが、自分に矢印を向けないとただの失敗で終わってしまいます。そうではなく、失敗を経験に変えてほしい。「こういう失敗があったから」ではなく「こういう経験があったから」と先につなげていくことが大切です。技術的な教育というよりは、仕事に対する姿勢や向き合い方を伝えることがほとんどですね。 ―スタッフ一人ひとりが自分事として捉えると。 辰井:お客様にとってのこのサロンは「サードプレイス」ですが、スタッフにとってのここは「セカンドプレイス」です。「アウル」というこの職場を誇れる環境にするためには、すべて自分たちで築いていく必要があります。スタッフ一人ひとりがサロンを動かしているという感覚を持ち、取り組んでほしいと思います。自分に矢印を向けることで、美容師として人として成長し、お客様から信頼を得られる存在になり、「アウル」が誇れる店になる。それが、「セカンドプレイス」の完成形だと思います。 関西圏でさらなる勢力拡大を視野に ―今後、サロンとしてチャレンジしてみたいことはありますか? 辰井:大人男性のメンズサロンとして地域で、関西で一番まで引き上げたいという想いはありますが、そのためにはまず、同じ目標や考えを持つスタッフを増やしていく必要があります。私の目標では2年間隔で1店舗ずつ増やし、35歳までに5店舗を展開するプランを立てています。 ―出店するエリアの目星も立っているのでしょうか? 辰井:今考えているのは、大阪では梅田と天王寺です。梅田には大人男性のカラーをメインとしたサロンを構想に入れています。というのも、メンズカラーの専門店は大阪ではそれほど多くないので、カラーに特化したメンズサロンを展開したいなと。天王寺はまだメンズサロンが浸透し切っていない大きな街なので、参入していきたいと考えています。大阪に3店舗開業した後は、「ソワンドゥ・ブレス」時代に長く勤めていた奈良と、地元の神戸にも1店舗ずつ出店したいですね。 ―どれも比較的大きな街ですね。 辰井:「大人男子のサードプレイス」という第3の場所は、できるだけ都会に出店したいと考えています。都会に出店すれば、競合するサロンが増えてテナント代も上がり、経営は難しくなります。ただ生半可なことを言うようですが、利益よりもブランドを大切にしたい。都会で成功すればブランド力は高まりますし、ブランドのコンセプトに合ったサロンを築くほうが自分たちの第2の場所として居心地が良く、幸せなんです。ただ、心斎橋店ほど広いサロンを設けることは、今のところ考えていません。 ―その理由とは? 辰井:今の心斎橋店はゆったりとした店内で、立地も満足しているのですが、きめ細やかなサービスと落ち着いた空間を考えれば、店舗面積はもう少し狭いほうがベターだとも思います。心斎橋店の席数は5席ですが、理想は3席。今後は3席か5席のサロンをベースに展開していきたいですね。 ―最後に、大阪エリア、関西エリアで「アウル」はどのような存在でありたいですか? 辰井:「アウル」を冠したお店は数多くありますが、その中でも「大阪の『アウル』と言えばメンズサロンだよね」と言っていただけるような存在になりたいですね。私自身、「アウル」の経営者というよりもブランドプロデューサーとしての気持ちのほうが強いと思います。「アウル=大人男性のサロン」というイメージが定着するよう、これからもブレずに突き進んでいきたいと思います。 <SALON INFO> owl心斎橋店 produced by brace/アウルしんさいばしてん プロデュースド バイ ブレス 大阪市中央区西心斎橋2-18-6 アベニュー心斎橋203号 Instagram :@owl_shinsaibashi
「“大人男子のサードプレイス”『owl心斎橋店 produced by brace』とは【前編】
「soin de brace(ソワンドゥ・ブレス)」など、関西圏にヘアサロンを展開する株式会社ハーベンから、初のメンズサロン「owl(アウル)心斎橋店 produced by brace」が2023年6月にオープンしました。ここでは、スタイリストだけでなくブランドのプロデュースも手掛ける店長の辰井翼さんに、サロンに関するお話をたっぷり伺いました。 仲間にも支えられて初のメンズサロンを実現 ―まず、店名にある「produced by brace」とは? 辰井:私たちが在籍する株式会社ハーベンの中で最も大きなサロングループが、「soin de brace(ソワンドゥ・ブレス)」になります。ハーベンが間もなく100周年を迎えることもあって、「ブレス」から初めてのメンズサロンを展開するという話に。メンズブランドの代表という名誉なポジションを預かり、「owl(アウル)」というブランド名まで命名させていただきました。名付ける際、運営元の「ブレス」から派生したブランドであることを発信するために、「produced by brace」を付けさせていただきました。 ―このサロンをオープンするまでの経緯は? 辰井:話はさかのぼりますが、私がハーベンに入社したのが今から約9年前。最初に配属されたのは、「ソワンドゥ・ブレス」の奈良店でした。当時の会社は女性にターゲットを絞った教育に力を入れていましたが、私はもともと「かっこいいスタイル」が好きで、自己集客のターゲットを男性に絞って営業していました。すると予想以上にニーズがあり、気が付けば一人勝ちしている状態に。次に配属された奈良県のあやめ池店でも同じような成果が得られたんです。 ―メンズ専門のサロンで勝負できる、と。 辰井:ある程度の確信はありました。あとは、仲間との出会いも大きかったですね。美容学生の就職活動や研修などを受け入れることも多い大型サロンの心斎橋店で勤務していた時のこと。ある時、メンズのスタイリングに特化していた私に興味を持って見学に来てくれた美容学生さんがいて、メンズスタイルの話などで盛り上がり、最終的にはハーベンに入社する流れに。最初は私と違う店舗に勤務していましたが、今では「アウル」のスタッフの一人として活躍してくれています。また、奈良店で一緒に働いていた後輩からも「僕もメンズに特化したいです」と想いをぶつけられました。メンズサロンの構想は決して独りよがりの考えではありません。一緒にやりたいと言ってくれる仲間たちが現れ、それに突き動かされたことで、「アウル」の立ち上げに至ったんです。 ワンランク上の大人男性に導く場所 ―サロンのコンセプトを教えてください。 辰井:「オトナ男子のサードプレイス」です。私はブランド名を考えるよりも先にコンセプトを決め、コンセプトに合ったブランド名や空間を考えていきました。大人男性の第3の場所を作りたいと思った理由としては、男性は基本的にバーバーや理髪店に行くことのほうが多いと思いますが、男性のための美容室が増えてきているという事実はまだそれほど認知されているわけではありません。そんな状況の中で、ターゲットは美容に興味・関心を強く持ち始めた世代。このような世代の方々を「アウル」というブランドでプロデュースし、ワンランク上の大人男性に導く場所にしたい、というのが私たちの想いです。 ―コンセプトから決めていったのですね。 辰井:やはり、店舗ごとでコンセプトがしっかり定まっていないと進むべき方向を見失い、スタッフ全員の足並みがそろわないですからね。立場的にも自分のポジションが上がれば上がるほど、後輩たちを同じ方向に導く舵取りが難しくなります。スタッフそれぞれの人生と言えばそれまでですが、せっかく一緒に仕事をしているわけですから、みんなで同じ方向に歩んで良い成果を得たい。大切なスタッフを路頭に迷わせるわけにはいきませんからね。その意味でも、コンセプト設定は本当に大事だと思います。 ―サロンの立地を心斎橋、アメリカ村の三角公園前に決めた理由とは? 辰井:求めている人しか訪れない運が舞い込んできた、という感じでした(笑)。物件を探していた2022年末のタイミングで、この物件が空きになるという連絡が入ってきて、これは運命だなと。契約する前にこの界隈のペルソナを考えた時、心斎橋や南船場、南堀江に勤務・在住の男性像をイメージしました。彼らが若者の集まる三角公園に来るのかと考えれば、おそらく来ないだろう、と。そこで、コンセプトとペルソナをつなぎ合わせるために後付けをしたんです。男性はどんなに早くても髪を切るペースは月1回。その月に1回、普段とは違う空気感を味わえる立地で、来店すればブラックを基調とした空間の中でサードプレイス感が味わえる、と。これが意外としっくりくると思ったので、この物件に決めました。 ―内装のこだわりはありますか? 辰井:「オトナ男子のサードプレイス」のコンセプトを体現するため、ブラック一色という非日常的で、ゆったり落ち着いた空間作りにはこだわりました。今後、スタッフやお客様の数が増えていったとしても、席数を増やすことは後からでも可能ですからね。あと、ご来店いただいたお客様がノスタルジーに浸っていただけるJ-POPやアニメソングをBGMで流しているのもポイントですかね(笑)。 ―BGMが邦楽とは珍しいですね。 辰井:お客様は20代後半から30代前半がコアターゲットになるので、その世代の方々が子どもの頃によく聞いていた曲、お父さんの車から流れていたような曲をBGMで流しています。こうしたサービスもメンズサロンならではだと思います。かっこよくなっていただくだけでなく、「寛ぎたい」「気分を上げたい」といった感覚的な付加価値にも働きかけたいと思っています。 後編に続きます。 <SALON INFO> owl心斎橋店 produced by brace/アウルしんさいばしてん プロデュースド バイ ブレス 大阪市中央区西心斎橋2-18-6 アベニュー心斎橋203号 Instagram :@owl_shinsaibashi