【後編】NYCの最前線で働くHIROさんにインタビュー! -これからの目標と後輩へのメッセージ-
あらゆる人種が街を闊歩し、顔を見上げると摩天楼が立ち並ぶ大都会。そう、今も昔も世界の経済・ファッション・カルチャーのトップに君臨するNYCです。最先端の空気感に触れたいなら誰しもが憧れる場所にて、10年以上も第一線で活躍している日本人がいます。その名もHIROさん。幼少の頃からブラックカルチャーに触れ、いつかはNYCのバーバーで働きたいという夢を叶えた氏に話を聞きました。すべては理想の自分になるため。一心不乱に突き進んだHIROさんのインタビューを前編・中編・後編の3記事に分けてお届けします。後編は自身が抱くこれからの目標、同じ夢を持つ後輩へのメッセージを語ってもらいました。 NYCで新たなチャレンジを模索中。 −今後はどのような目標を掲げていますか? 「自分のプライベート空間をNYCで借りたんですよ。今はその場所を工事していて準備中なんですけど。あんまり頭でっかちになることなく、臨機応変に使えるようなスペースにしたいなと考えています」 −臨機応変に使えるスペースというのは? 「例えばゲストを呼んでカットしたり、自分で使う道具を作って展示したり、また知人に貸してレンタルスペースとして機能させたりですかね。NYCに訪れたときと同じように、とりあえずやってみてそこから考えるというのもありなのかなと」 −場所だけ先に借りる行動力がHIROさんらしいですね。 「考え過ぎちゃうと動けない性分なので。とりあえずジャンプしてみて、着地点と次のステップを同時に探すような感覚ですかね。そのジャンプする方向を見定めるアイデアをちゃんと持ったうえで行動はしていますけどね」 −まだ具体的なプロジェクトは決まっていないんですね? 「そうなんですよ。色々と考えていることは進行しているんですが、まだ告知できるようなプロジェクトがなくて。ただ、今後も自分でコントロールできるような場所にしたいと思っています」 場所に左右されずに一生懸命な人がカッコいい。 −今後、海外で仕事をしてみたいと考えている方々に、ご自身の経験も踏まえてアドバイスをお願いします。 「とりあえず海外に行ってみたいと思っているなら、すぐにでも飛行機のチケットをゲットして現地に行くのが大切ですね。考えてても結果は出ませんから。行ったら見えるものも、匂いも、聞こえてくる音も違います。そういう状況にいたら、考え方って自然と変わるんですよ。最近はインターネットの普及で情報は手に入りますが、そこには良い部分しか紹介されていないのがほとんど。ブラウザーで見る情報なんてリアルじゃないから、やっぱりライブ感を得るためには行きたい場所に渡ることです」 −何事にも行動を起こすから始めようということですね? 「そうですね。別に海外で働いているからってカッコいいというわけじゃなく、自分の好きなことを一生懸命やっている人がカッコいいじゃないですか? だからこそ、自分に素直になって動いて欲しいですね。確かにガッツは必要ですが、ちょっとくらいの失敗でヘコたれているようではダメだと思います」 −現在の日本の美容業界はどう思いますか? 「僕が偉そうなことを言う立場ではないんですが、日本には日本のスタイルがあってカッコいいと思いますよ。一部のアメリカ人の中で日本のヘアサロンというと、いわゆる原宿ファッションのように奇抜なカラーを施した髪型を作るお店ばかりだと思っている人もいます。それと同じようにバーバーでいうと、ポマードを付けて、7:3でビシッと横分けするだけと思っている人もたくさんいます。それだけではないし、僕自身も幅広いスタイルを作ります。これからもその人を活きるようにベストなスタイルを提案したいですね」 NYCで活躍するヒロさんのインタビューをお届けしましたが、いかがでしたでしょうか? インターネットが発達した現代では、あらゆる情報が得られるようになりましたが、リアルで体験してみないと分からないことがあるのも事実です。考えるよりもまずは行動することが、なりたい自分に近づける鉄則ですね。 HIROさん 広島で生まれ育って専門学校への入学とともに大阪へ。学生時代は昼間にヘアサロンで働きつつ、夜間で関西美容専門学校、通信教育でNRB日本理容美容専門学校に就学。大阪の枚方市にある『Braid&Bumba』を経て渡米し、現在はNYCの『FRANK'S CHOP SHOP』に勤務。人気バーバーに勤めつつ、同地にて契約した新しいフリースペースをベースに「何か面白いことを発信したい」と模索中。 Instagram:@mrhirojp
【中編】NYCの最前線で働くHIROさんにインタビュー! -アメリカと日本の違い-
あらゆる人種が街を闊歩し、顔を見上げると摩天楼が立ち並ぶ大都会。そう、今も昔も世界の経済・ファッション・カルチャーのトップに君臨するNYCです。最先端の空気感に触れたいなら誰しもが憧れる場所にて、10年以上も第一線で活躍している日本人がいます。その名もHIROさん。幼少の頃からブラックカルチャーに触れ、いつかはNYCのバーバーで働きたいという夢を叶えた氏に話を聞きました。すべては理想の自分になるため。一心不乱に突き進んだHIROさんのインタビューを前編・中編・後編の3記事に分けてお届けします。中編はアメリカと日本の違い、渡米したもう一つの理由などを語ってもらいました。 →【前編】NYCの最前線で働くHIROさんにインタビュー! -活動の場を海外に移したきっかけ- はこちら(公開後リンク) やり切りたいとの想いからNYCの地に根を張ることに。 −1年で帰国するつもりがNYCを拠点にしようと思ったのは? 「こっちに住んでみて、頑張ってる人たちを間近で見られたからですね。例えば、3ヶ月から1年でアメリカから日本に帰ってきて、現地のブランドを使って仕事をする人も多いじゃないですか? それを否定するつもりはありませんが、何だか僕には軽く思えてしまって。先ほども言ったように現地で外国人と勝負している人がたくさんいるんです。自分自身がアメリカに来た頃も、10年以上もNYCで奮闘している方も多くて。そんな人たちを横目にして。アメリカを土台に日本で仕事をしようとは思えなかったんですよ。自分にできることは思い残すことのないようにしようと思ったのが、この場所に止まろうと考えた理由です。結果的に3年、5年と過ごした人にしか分からない感覚が得られたと思っています」 −それにしても異国の地で10年以上も過ごすのはスゴイの一言に尽きます。 「入社してから今まで、仕事漬けの毎日ですよ(笑)。ちなみに正式に『FRANK'S CHOP SHOP』に入ったのは、アメリカに渡って1年後です。学生ビザを取得して生活していたので給料を受け取ることができず、それまではインターンシップ的な扱いでした。労働ビザだけでなく、アメリカで就労する人は必ず加入しないといけない社会保障制度のソーシャル・セキュリティナンバーも発行しました。周りの人に聞きながら、現地で働くための申請がスムーズにできたのも良かったですね」 アメリカへと渡ったもう一つの理由とは? −日本とアメリカで仕事の違いを実感したことはありますか? 「こっちは完全歩合制で、やればやるほど報酬がもらえます。自分が思う大きな違いは給料面ですかね。日本人はクオリティを重視するからか、報酬が増減しなくてもいいものを作ろうとしますよね。その給与体系をアメリカ人にしてしまうと、人種的なものもあって「別に毎月のように決まったお金がもらえるから」とバレずにサボろうとしますよ」 −HIROさんはより多くの報酬を受け取るために、どのような工夫をしてきましたか? 「毎日のようにちゃんと時間通りに出勤して、自分が持っている技術のレベルを安定して供給することですかね。当たり前のことを当たり前にこなすという日本人の考えをアメリカで実践しています。継続は力なりで、塵が積もって山となるみたいな」 −大胆な行動とは裏腹に、仕事のスタイルは堅実でとても好感が持てます。 「実はアメリカに行きたいなと思った理由ってもう一つあるんです。勤勉な性格の持ち主って自分でも理解しているから、アメリカに行けばいい意味でも悪い意味でもラフなアメリカの気質がちょっとは身に付けられるんじゃないかと思って。日本人とアメリカ人を足して割ったようなバランス感のある人間になりたかったんです。機械的にもなりたくないし、かといってアーティストぶりたくもなくて。自分にはなかった要素が上手く足せたんじゃないかと思います」 −NYCで生活してどのような部分が自分自身にとってプラスになりましたか? 「すいません、それが言葉では上手く伝えることができなくて。ただ、作り上げるスタイルは日本にいた頃よりも変わったと思っています。ヘアカットに限らず手仕事って、その人のライフスタイル・バックボーン・カルチャー・ナショナリティが映し出されるじゃないですか。目に見えないアメリカの空気感を取り込むことによって、ゲストに提供するスタイルはより自分の理想に近づけたと思っています」 −外国人の髪の毛を扱ううえで違和感はありませんでしたか? 「仕事をこなしていく中で、もちろん試行錯誤はありましたよ。中でも日本では出会ったことのないようなカーリーヘアは印象に残っています。ウェットとドライのときの状態がまったく異なるので当初は苦労しましたね。アメリカでは日本人のように髪質がみんな似通っていません。しかも、こっちの人たちは例えば薄毛や縮毛といった特徴的な髪質を日本人のようにコンプレックスだと思っていないんですよ。今は仕事で重要視しているのは友人宅の冷蔵庫にある食材で美味い飯を調理する感覚ですかね。臨機応変に対応しながら、ベースが異なる一人ひとりにベストなスタイルを作り上げることを大切にしています」 「何事もバランス感覚が大事」と、これまでの自分にアメリカ人的なエッセンスを取り入れたかったのが、もう一つの渡米の理由だったと言うHIROさん。その遊び心が髪質の異なる様々なゲストに対応できるスキルを養ったのかも。後編では自身のこれからの目標、そして氏のように海外で仕事をしてみたいと考える後輩に向けたメッセージも語ってもらいます。 HIROさん 広島で生まれ育って専門学校への入学とともに大阪へ。学生時代は昼間にヘアサロンで働きつつ、夜間で関西美容専門学校、通信教育でNRB日本理容美容専門学校に就学。大阪の枚方市にある『Braid&Bumba』を経て渡米し、現在はNYCの『FRANK'S CHOP SHOP』に勤務。人気バーバーに勤めつつ、同地にて契約した新しいフリースペースをベースに「何か面白いことを発信したい」と模索中。 Instagram:@mrhirojp
【前編】NYCの最前線で働くHIROさんにインタビュー! -活動の場を海外に移したきっかけ-
あらゆる人種が街を闊歩し、顔を見上げると摩天楼が立ち並ぶ大都会。そう、今も昔も世界の経済・ファッション・カルチャーのトップに君臨するNYCです。最先端の空気感に触れたいなら誰しもが憧れる場所にて、10年以上も第一線で活躍している日本人がいます。その名もHIROさん。幼少の頃からブラックカルチャーに触れ、いつかはNYCのバーバーで働きたいという夢を叶えた氏に話を聞きました。すべては理想の自分になるため。一心不乱に突き進んだHIROさんのインタビューを前編・中編・後編の3記事に分けてお届けします。前編はNYCに抱いた憧れと実際に海外へと渡った経緯について語っていただきました。 都会に憧れを持った初期衝動のままに海外へ。 −昔から漠然と海外で働くことを目指していたんですか? 「そうですね。僕は広島の田舎で生まれ育って、“いつかは大都会で働きたい”と幼少の頃から考えていました。大阪の専門学校を卒業して就職が決まらず、また海外旅行にも行ったことがなかったので、実際にアメリカへ遊びに行ったのがNYCに興味を持ち始めたきっかけですね」 −その後はNYCではなく大阪のヘアサロンへ? 「いきなりNYCではなく、まずは日本で腕を磨くことを考えました。本当は東京のサロンで働きたかったのですがご縁がなく、専門学校が大阪だったこともあって、枚方の『Braid&Bumba(ブレイドアンドブンバ)』に入社することに」 −HIROさんが生き生きと働けるようなブラックカルチャーに傾倒したお店ですね。 「そうなんです。サロンが目指すスタイルがめちゃくちゃ好きで。黒人が取り入れるようなスタイルを前面に打ち出しているのに惹かれましたね」 −入社したのはいつ頃ですか? 「21歳のときなんで、今から19年も前ですね。そこから28歳まで『Braid&Bumba』で働かせてもらい、そこからNYCへと渡りました」 −ちょうど30歳手前ですね。 「誰しもが30歳前後に“このままでいいのか”って疑問を抱くじゃないですか。僕も10イヤーズディケードを越える前に、とりあえずNYCに行ってみようと思ったんです。28歳というのも計算があって、見知らぬ土地で生活するのに1年を通して過ごさないと、4シーズンの感覚で掴めないと思っていて。当初はNYCで1年を過ごして日本に戻り、29歳くらいに日本でお店をやろうという考えもあったんです。それが気付けばNYCで10年以上も生活するなんて、その当時は思ってもいなかったですね(笑)」 熱意が通じて都会の中心地にあるバーバーで働くことに。 −アメリカではこういうお店で働きたいという想いはありましたか? 「漠然とこういうスタイルのお店で働きたいというのがありましたが、日本で黒人文化に触れてブレーズを取り入れるなど、男性のタイトなデザインに傾倒していったんです。自分自身のスタイルを活かせられると思ったのがバーバーショップで。ただ、バーバーといってもNYC中に何軒もあるじゃないですか? 外国人が日本で寿司屋で働こうと思ったときに、どこのお店に行けばいいのか分からないのと一緒で。フッドと呼ばれる街の床屋も受けてはみましたが、やっぱりNYCで仕事をするなら、東京でいう代官山のような場所が良いじゃないですか。今、働いているバーバーは自分も以前から屋号を知っているほどの名の通ったお店なんです」 −現在、働かれているのはどこのバーバーですか? 「『FRANK'S CHOP SHOP(フランク チョップ ショップ)』というお店で、場所はマンハッタンの中でもチャイナタウンとロウアー・イースト・サイドのボーダーラインにあります。今でこそ日本にも進出しているんですが、僕が入社した当初はここにしかなくて」 −このバーバーに入社が決まるまで、どれくらいの時間がかかりました? 「ちょうど渡米してから1ヶ月です。入社するまで色々なことをしていて……。“髪の毛切ります”と自分で手描きしたボードを置いて、路上や地下鉄で髪を切っていましたね。アメリカは自由の国だから何でも受け入れてくれると勘違いしてたんです(笑)。ある日、警察が来て切符を切られてしまい、200ドルの罰金が課せられてしまいました。そこにはすぐに払わないと裁判所に訪れる義務があり、そこで敗訴になると100万円ほどの罰金刑になるとの記載があり。そこまでのリスクは背負えないと、今度はウェブサイトや掲示板に“出張で髪を切ります”と告知して、色々な場所に出向いては髪を切っていましたね」 −単身でアメリカに渡るのはもちろん、その後の行動力も半端ないですね!! 「出発前にみんなから“頑張って!!”と鼓舞してくれたこともあり、何とかしなくちゃダメだという想いでいっぱいでした。誰も知らない土地なんで、恥も外聞もないですし、怖いものもまったくありませんでしたよ」 −その熱意は昔からお持ちだったんですか? 「『Braid&Bumba』でも『FRANK'S CHOP SHOP』でもですが、実は履歴書を何度か送っているんです。『Braid&Bumba』は3回ほど送りました。オーナーの早川さんが3度目に履歴書を見たらしく、“面白い子がいる!”と連絡をしてくれて。『FRANK'S CHOP SHOP』はウォークインして髪を切ってもらい、受付の女の子に“ここで働きたいから”と伝えて電話番号を渡しました。1週間経っても、2週間経っても連絡がこないから、もう一度お店に足を運んだんです。それでも“電話番号は残ってるから連絡するよ”と言われて。また2週間ほど連絡がなかったんですが、ある日の朝10時に“今日来れるか?”との連絡がありまして。そこから10年以上もここで働いていますね」 NYCに渡って夢を実現させたHIROさん。当初は1年で帰国する予定だった氏がなぜアメリカに止まったのか? 中編では渡米したもう一つの理由、現地での仕事を通じて得た経験などを語っていただきます。 HIROさん 広島で生まれ育って専門学校への入学とともに大阪へ。学生時代は昼間にヘアサロンで働きつつ、夜間で関西美容専門学校、通信教育でNRB日本理容美容専門学校に就学。大阪の枚方市にある『Braid&Bumba』を経て渡米し、現在はNYCの『FRANK'S CHOP SHOP』に勤務。人気バーバーに勤めつつ、同地にて契約した新しいフリースペースをベースに「何か面白いことを発信したい」と模索中。 Instagram:@mrhirojp
教えて!海外のトレンドって? -ヘアスタイル編-
みなさんはヘアスタイルをオーダーする際、どのようなものをイメージソースにしていますか? 好きなアーティストのスタイルを真似たり、雑誌の誌面を見せたり、Instagramでチェックしたスタイルを提示したり。あらゆるスタイルサンプルがあふれる中、海外でトレンドのリアルなヘアも参考の一つにしてみては? セレブやモデルの髪型ではなく、ストリートに根付いたスタイルをオランダで活躍中のヘアアーティストのHAKAHさんにお聞きしました。 「ヨーロッパの人たちはメディアの力に頼ることなく、好きな雑誌や広告を見ている傾向にありますね。日本ではオーダーがあればクリクリのカールでも縮毛矯正などを施し、その人の毛質では寄せ付けにくいヘアスタイルに仕上げようとしますよね。海外では本来の髪質に沿ってナチュラルなスタイルを楽しむ人が多いんです」と言うHAKAHさん。 「自然体のスタイルを基本としつつも、よりストレートを活かしたい人は“マレット”、万国共通かもしれませんが小顔効果を狙いたい方なら“姫カット”の両極端に分かれています」。“マレット”は日本では70年代から80年代にかけて流行し、前髪とトップが短くてサイドを刈り上げ、襟足部分だけを長く残すウルフに近いスタイル」。 「一方の“姫カット”は顔まわりに毛量を残しつつ、段差を付けるなどしてカット。視線を散らすことで顔をより小さく見せる効果を演出している。「日本で人気が巻き起こっているKポップアイドルのヘアスタイルも、海外でももちろん注目を集めていますよ。でも、日本と違ってそのスタイルは大多数の中にある一つのジャンル。より広い視野を持っている海外の人たちのように、自分自身と向き合って自由なヘアスタイルを楽しんでください」。 HAKAH 2019年から活動の場をオランダへ。ヘッドプロップの制作やヘアデザインにまつわるクリエーションに携わり、現地で企業を立ち上げてオリジナルのヘアオイルをプロデュース。 Instagarm:@hakahair