グローバルな美の新標準。新しい世界へ挑戦するヘアサロン『LIM』
今や海外にもその名を轟かす、大阪発のサロン『LIM(リム)』。東京進出、そしてグローバル展開と、数々のプロジェクトを成功に導いてきたのが、現在LIMの海外統括責任者を務めるカンタロウさんです。日本と海外を行き来する生活を15年以上続ける彼の目に、各地のサロンや美容師はどう写っているのでしょうか。カンタロウさんの言葉には、国境を超えて活躍するためのヒントが詰まっていました。 海外に出て気づいた、日本人への期待値 ─LIMにとって初めての海外進出となったのが、2009年のシンガポール店のオープンでした。いきさつを教えてください。 「僕自身のことから話すと、福岡出身で実家は明太子屋さんです。美容師になってからも、いつかは家業を継ぐという意識はありました。28歳のころ、父が余命宣告を受け亡くなったのですが、結果として美容師を続ける道を選んだんです。オヤジの願いを断ってまでやるんだから、とギアを入れ直し、東京進出に打ち込みました。成功と言えるところまでいったなと思い、墓前で手を合わせオヤジに報告したのですが「ここがゴールなのか?」と違和感があって。国内でお店を出して成功させることは、同じファミコンのカセットを何回もやって、攻略しているような感覚になっていました。ゼロからサクセスをつかむ、という方が性に合っていたのか、海外を目指すようになっていました。実は、はじめはシンガポールという予定ではありませんでした。国ごとのルールの違いや、人のつながりもあり、シンガポールになったという流れです」 ─海外展開して気づいた、日本との違いはありますか? 「日本人美容師に対する評価や期待値が高いと感じました。特にはじめのころは“お任せ”で来られるお客さんが多かったです。施術後に“これでいいですか?”と確認すると、逆に“あなたが良いと思う形にしてほしいから任せたんだけど?”と言われることもありました」 現地の文化にフィットしながら最適解を探る ─文化やトレンドの違いは感じますか? 「まず文化より前にあるのは、気候の違いです。常夏で湿気が多い土地では、コテでセットしてもすぐに崩れてしまいます。しかもシャンプーを毎日しないとか、生活スタイルも違います。次にトレンドですが、SNSが広まった今は場所を問わず同時的に広がっていると感じます。スマホを見せられて「これにしたい」とはっきり要求されることが増えました。写っているモデルは日本、韓国、欧米といろいろ。日本人が見本ならかわいい雰囲気、韓国ならきれい、セクシーなど求められるスタイルも幅があります」 Hair:Tomoya(@tomoyaiizawa) ─スタッフとのコミュニケーションや人材育成でも、日本と異なる点はありますか? 「自分が経験してきたストイックなやり方では、人が続かないのだと分かりました。働くことへの考え方だけでなく、スクールのカリキュラムが国ごとに違うことも大きいですね。少しずつ現地に合わせ、教育の仕方を変えてきました。ただ、ずっと大切にしてきた「目の前のお客さまを満足させる、幸せにする」という思いは、彼らにもすぐ伝わります。本人が上手くなりたいと思ったら、学び方が変わります。しかも、情報の読み取り方も自然と深くなる。そこは日本も海外も同じです」 「闘いに行く」姿勢を持って ─今後の展望を聞かせてください。 「“日本から来たサロン”というイメージを消していきたいと思っています。ローカルの目線で評価されてこそ意味があると思っているので。あとは、スタッフのやりたいことを応援したいと思っています。シンガポールに出店してからは、海外を目指して入ってくる子も増えました。あのころボスが僕にチャンスをくれたように、今度は(後輩に)返していく番だと思っています」 ─世界での活躍を目指す美容師や学生に向けて、メッセージをお願いします。 「“若いうちに海外に出た方がいい”と言う人は多いし、間違いではないと思います。それでもまずは、日本の中で基本の技術をマスターすることをお勧めしたいです。例えば25歳までにとか、目標を持ってベーシックを身につけて、外に出た方が強い。日本の技術はトップレベルですから。実力を手に入れてから出た方が、闘いやすいんです。“学びに”ではなく“闘いに行く”スタンスを持ってほしい。日本の技術を輸出し、見せつけるような美容師になってほしいと願っています」 常に前を向くスタンスで、メイド・イン・ジャパンの誇りを持って闘い続けてきたカンタロウさんの話は深く響きますね。海外への憧れから希望を持つことは素晴らしいことですが、まずは今いる場所で挑戦することの大切さを再確認しました。 カンタロウ LIM OOO(Oversea Opportunity Officer = 海外統括責任者) Instagram:@kantaro0427 福岡県北九州市出身。高校を卒業後、美容師を目指して大阪へ。1996年に有限会社LESS IS MORE (LIM) に入社し、20代にして人材育成や国内外の店舗展開に携わる。コロナ禍を機にセミリタイヤを経るも情熱はやまず、後進の指導やプロデュース業、さらにサロンワークも継続している。 <SALON DATA> KIZUKI +LIM/キズキ プラスリム 31 Seah Street Singapore 188387 Instagram:@kizuki_lim TOKI +LIM/トキ プラスリム 328 North Bridge Road #02-33 Raffles Hotel Arcade Singapore 188719 Instagram:@toki_lim mimi +LIM/ミミ プラスリム 103 台北市大同區赤峰街47巷3號2樓 Instagram:@lim_taiwan MILK +LIM/ミルク プラスリム 200021 上海黄浦区湖滨路168号无限 Instagram:@milk_lim_shanghai